診断のポイント
【1】過去2か月以内に東南アジア,中米,アフリカなどの流行地への渡航歴。
【2】発熱。
【3】腹部症状。
【4】食歴(海外渡航歴がなくとも,外国人保菌者が調理した料理を介しての発生報告もある)。
【5】3年以内の莢膜Vi多糖体蛋白結合型腸チフスワクチン(国内未承認)の接種歴があれば腸チフスの可能性は低い。
緊急対応の判断基準
消化管出血,消化管穿孔の可能性があり,その際は開腹手術が可能な施設での治療が望ましい。
症候の診かた
【1】潜伏期:報告により差があり,最短で3日,最長で60日とされているが,一般的には7~14日である。
【2】初期症状:発熱,倦怠感が多く,熱も最初は微熱であることが多い。病期は症状から以下の4つに分けられる。
【3】第1病期:古典的には比較的徐脈,バラ疹,脾腫を呈する。近年,本邦での報告では徐脈やバラ疹を呈さない症例が多い。
【4】第2病期:稽留熱を呈し腹部症状が出現する。腹部症状のうち腹痛も報告によりばらつきがあるが軽度なものも含めると比較的頻度の高い症状である。
一方で下痢もしくは便秘は50%前後の症例で認めるのみである。重症時には難聴や意識障害を呈することもある。
【5】第3病期:熱型が弛張熱に移行し徐々に解熱傾向となる。この時期に消化管出血や消化管穿孔の合併症が起こることがある。虫垂炎と鑑別が必要になることがあるので注意が必要である。
【6】第4病期:回復期であり解熱する。完全に症状が軽快するまでには時間がかかることも多い。
検査所見とその読みかた
【1】末梢血液一般検査:成人においては白血球の軽度増多もしくは減少,小児においては白血球の増多を認め,血小板は減少傾向を示すことが多い。
【2】生化学検査:CRPなどの炎症反応の上昇を認め,AST,ALT,乳酸脱水素酵素(LDH)などの肝逸脱酵素の上昇も認めることが多い。その他特異的な検査所見はない。
確定診断の決
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