診断のポイント
【1】世界的には細菌性赤痢患者の99%は発展途上国でみられる。発展途上国では患者の69%は5歳以下の小児である。
【2】本邦では国内感染例が30%であり,国外(アジア地域:インド,インドネシア,中国,ベトナム,カンボジア,タイ,フィリピン,ネパール;アフリカ地域:エジプトなど)での感染例が70%である。2017年には本邦で141例報告された。
【3】主に経口的に感染し,汚染された飲食物から,またヒトからヒトへの直接的な感染,時に性行為感染もある。幼稚園などでの集団感染例や家族内感染例がある。10~100個の少量の菌量でも感染し,感染力が強い。家族内での感染率は約20%である。
【4】主に下部の結腸炎,直腸炎が起こる。
【5】本邦ではShigella sonnei(D群赤痢菌・ゾンネ赤痢菌)(68~90%)が最も多く,比較的軽症例が多い。ついでS. flexneri(B群赤痢菌・フレクスナー赤痢菌)(9~26%)が多い。S. dysenteriae(A群赤痢菌・志賀赤痢菌)は重症になりうるが本邦では少なく,S. boydii(C群赤痢菌・ボイド赤痢菌)も少ない。
症候の診かた
【1】潜伏期:1~7日(3日以内が多い)。
【2】症状:全身倦怠感,食欲低下,腹痛(70~93%),粘液性下痢便(70~85%),血便(35~55%),水様性下痢便(30~40%),発熱(30~40%),嘔吐(35%),テネスムスなどである。
【3】排菌期間:免疫不全がない人ではたいていは7日間で自然に軽快する。抗菌薬治療により症状の続く期間と便中排菌の期間は短縮するが,抗菌薬治療を行わないと排菌は7日~6週間続く。症状のある感染者には,2次感染を防ぐためにも全員抗菌薬治療を行うべきである。
【4】腹部触診:しばしば左下腹部など下部結腸部に圧痛がある。中毒性巨大結腸症を合併すると鼓腸による腹部膨満がある。
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