診断のポイント
【1】周囲の発生疫学情報を得ること。
【2】医療面接で食事歴をしっかりと聞き取ること。
緊急対応の判断基準
特に腸管出血性大腸炎(大腸菌O157:H7などによる)が疑われる場合,またはベロ毒素が検出され,患者の腎機能悪化や血小板の低下がみられ,溶血性尿毒症症候群(hemolytic uremic syndrome:HUS)の発症が認められる場合,専門施設へ早期に紹介する。
症候の診かた
【1】細菌性食中毒では,可能性のある食品と調理方法の情報,そして潜伏期間が重要である。
【2】潜伏期間
❶数時間程度で発症する黄色ブドウ球菌,24時間程度のセレウス菌,48時間程度のウェルシュ菌は典型である。
❷先進国で最も頻度が高いカンピロバクター属では,2~5日間である。
【3】食中毒にみられる症状
❶腹痛,下痢,悪心・嘔吐,発熱などがある。特に下痢の性状をよく聞くことが重要である。
❷血便を伴う場合は,大腸が病変の主体であり,サルモネラ,カンピロバクター,病原性大腸菌の可能性がある。一方,血便を伴わない場合,トキシンが原因の小腸型の可能性がある。
検査所見とその読みかた
【1】便検査:下痢がある場合に行う。便の検査には,便のグラム染色,便の培養,便中のベロ毒素の検査などが含まれる。
❶グラム染色:特に救急外来などで便のグラム染色が可能であれば,カンピロバクターのグラム陰性のらせん桿菌を探すことができる。また米国感染症学会(IDSA)の2017年ガイドラインでは,便中の白血球の検査は推奨されないが,白血球を伴う場合,大腸上皮を障害する大腸型の細菌感染かどうかの鑑別が可能である。
❷便培養:病原性大腸菌,サルモネラ,シゲラ,カンピロバクター,腸炎ビブリオでそれぞれに必要な培地が異なるため,どのような細菌を想定しているのかを細菌検査室に連絡していることが望ましい。
【2】血液培養:患者の状態が悪い場合には,