診断のポイント
【1】原因ウイルスはさまざまであるが(表1図),単純ヘルペスウイルス(HSV)による脳炎(HSV encephalitis:HSE)が多い。
【2】急性の発熱,意識障害・けいれん・髄膜刺激症状などの中枢神経症状が特徴である。
【3】脳脊髄液検査では単核球優位の細胞増多がみられ,細菌や真菌などは検出されない。
HSEでは,辺縁系・側頭葉の症候や同部位の左右差のあるMRI所見がみられ,脳脊髄液のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)でHSV DNAを検出する。
HSEが疑われる場合,脳脊髄液やMRIが正常でもPCRの結果を待たずにアシクロビルによる治療を開始する。
緊急対応の判断基準
早期治療開始が必要な緊急対応疾患である。意識障害やけいれんなど,急性脳炎あるいは脳症が疑われる場合は直ちに集中管理が可能な中核病院に搬送する。
症候の診かた
【1】発熱がみられ,しばしば上気道感染などの先行感染がみられる。
【2】意識障害,頭蓋内圧亢進徴候,髄膜刺激症候(髄膜炎の合併)といった全般的な症候,脳内の病変部位に対応する局所神経症候がみられる。
【3】辺縁系・側頭葉を主に侵すHSEでは,発熱,意識障害,けいれんのほか,精神症状,人格変化,異常行動,記銘力障害,感覚失語,口唇傾向,性的異常,ミオクローヌスなどがみられる。
検査所見とその読みかた
【1】血液検査:高度の炎症所見を認める細菌性髄膜炎や代謝性脳症(低血糖,アシドーシスなど)の病態の鑑別に有用である。
【2】頭部MRI/CT
❶MRIはCTより検出感度が高く,びまん性あるいは限局性の病変を認める。
❷HSEでは,MRI上,側頭葉内側部を中心とした島回や前頭葉に,左右差のある高信号(拡散強調画像,T2強調画像,T2 FLAIR画像)がみられる(図1図)。出血性変化もみられる。CTでは同部位に低吸収域がみられ,高信号域の混在もみられる。
【3】脳脊髄液検