診療支援
診断

重症急性呼吸器症候群(SARS)
††
Severe Acute Respiratory Syndrome (SARS)
関 雅文
(東北医科薬科大学教授・感染症学)

診断のポイント

【1】SARS流行地への渡航歴などの聴取が重要である。

【2】高熱,頭痛,筋肉痛などインフルエンザ様の前駆症状から,数日で呼吸困難感や乾性咳嗽,低酸素血症などに下気道症状主体へ急速かつ重篤に移行することが多い。

【3】20%ほどの症例がいわゆる急性呼吸窮迫症候群(acute respiratory distress syndrome:ARDS)となり,人工呼吸管理になるとされている。

緊急対応の判断基準

【1】2類感染症であり,直ちに保健所へ届け出る必要がある。

【2】そのうえで,都道府県知事の指示のもと,特定感染症指定医療機関,第一種もしくは第二種感染症指定医療機関に入院させるべきである。

【3】人工呼吸管理をはじめとする集中治療が可能な施設への搬送が必要となる。

【4】院内感染のリスクも高く,接触感染や飛沫感染が主であるが,空気感染対策も必要となる。したがって,陰圧個室対応が可能な施設での管理が望ましい。

症候の診かた

【1】SARSコロナウイルス(SARS-CoV)によるウイルス性疾患である。

【2】潜伏期間は2~10日で平均5日程度とされている。

【3】主な初発症状は悪寒,頭痛,筋肉痛などインフルエンザに類似する。

【4】発症後3~7日でほぼ全例に乾性咳嗽,60~80%に呼吸困難感,約25%から最大で70%の症例で第2週を中心に下痢が出現するとされている。

【5】20~25%ほどの症例でARDSに陥り,その約半数が死に至るとされている。

検査所見とその読みかた

【1】血液・生化学検査

❶SARSに特異的な血液学的,生化学的パラメーターはないが,病状とともに進行するリンパ球減少,血小板減少,活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)の延長,乳酸脱水素酵素(LDH)上昇,血清電解質の異常などが複数の研究により報告されている。

❷ALT,AST,クレアチンホスホキナーゼ(CPK)の上昇の報

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