診断のポイント
【1】日本国内では報告がない。2018年6月末までの症例(世界で2,229例)は大部分が中東,特に83%がサウジアラビアからの報告であり,現時点では同地域への渡航歴があることが診断上重要である。
【2】ヒトコブラクダがMERSコロナウイルスを保有しているため,渡航地でのヒトコブラクダとの濃厚接触歴を確認する。
【3】MERS患者との接触歴も確認する。
【4】潜伏期間は2~14日(中央値は5日程度)なので,渡航歴・接触歴から発症までの日数を考慮する。
緊急対応の判断基準
【1】MERSは感染症法上の2類感染症であり,医師が本症を疑った場合は直ちに保健所に届け出る。患者は保健所により感染症指定医療機関(特定,第一種または第二種)に移送される。
【2】厚生労働省によるMERS擬似症患者の定義の一部を表1図として抜粋するが,必ず原本を確認いただきたい。
症候の診かた
【1】無症状例から重症呼吸不全を呈して死亡する例まで多彩である。
【2】典型的な病像
❶発熱,咳嗽に始まり,急速に肺炎を合併,呼吸不全となる。
❷消化器症状,腎不全など多臓器不全を合併する場合もある。
[診断のポイント]に記した患者の渡航歴・接触歴が本症を疑う手がかりとなる。
検査所見とその読みかた
【1】血液検査所見:血小板減少,リンパ球減少,LDH,ALT,ASTの上昇などを認める。
【2】胸部画像所見:浸潤影や間質影など,多彩な肺炎像を認める。
【3】その他の検査所見:臓器障害の合併により,低酸素血症,腎不全などの検査所見を認める。
確定診断の決め手
【1】鼻腔吸引液,鼻腔拭い液,咽頭拭い液,喀痰,気道吸引液,肺胞洗浄液,剖検材料のいずれかを検体として,分離・同定による病原体の検出もしくは検体から直接のPCR法による病原体の遺伝子の検出ができれば診断確定となる。
【2】上記の検査は,医療機関からの報告・相談を受けて保健所が地方衛生研究
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