診断のポイント
【1】非可逆性の急性弛緩性麻痺。
【2】初発症状は発熱が多く,突然の筋力低下。
【3】麻痺は下肢に多く,左右非対称性で,数日間で急速に進行。
【4】病初期から著明な筋萎縮。
緊急対応の判断基準
【1】嚥下障害,呼吸障害が認められた場合は,呼吸管理が可能な施設へ転院。
【2】定型的な麻痺型ポリオを発症するのは感染者の0.1~1%。発症者の周囲には,多数の不顕性感染者が存在すると想定され,迅速な検査と報告が必要。
症候の診かた
【1】筋緊張の低下した弛緩性麻痺。
【2】深部腱反射は低下ないし消失。
【3】廃用性萎縮に比べて出現時期が早く,筋萎縮の程度も強い。
検査所見とその読みかた
【1】スクリーニング検査
❶MRIのT2強調画像で,病変部の脊髄前角に高信号領域を認めれば有意な所見となる。
❷神経伝導速度など神経生理学的検査では,脊髄前角細胞など運動神経細胞の傷害を裏づける所見も参考となる。
【2】ウイルスの鑑別
❶糞便からのウイルス分離が必須。麻痺出現後,すみやかに検体を採取する。
❷国内では,野生株ポリオウイルスは常在していない。ポリオウイルスかどうかの鑑別が重要。
❸弱毒生ワクチンが使用されている国々では野生株ポリオウイルス以外に,生ワクチン株が遺伝子変異を起こし,伝播型ワクチン由来ポリオウイルス(cVDPV)となっている。野生株かワクチン株かの鑑別が必要。
【3】抗体検査:血清中和抗体は,急性期と回復期のペア血清で4倍以上の上昇が認められれば診断的価値があるが,ワクチン接種者は発症早期から上昇しているため,確定できないこともある。
確定診断の決め手
【1】左右非対称の急性弛緩性麻痺。
【2】ポリオウイルスの分離・同定。
誤診しやすい疾患との鑑別ポイント
【1】Guillain-Barré症候群(→)
【2】非ポリオエンテロウイルス(NPEV)による急性弛緩性麻痺:ポリオとの鑑別のため,診断後すみやかに病原
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