診療支援
診断

流行性耳下腺炎
Viral (Epidemic) Parotitis/Mumps
青木 知信
(西福岡病院・理事)

診断のポイント

【1】両側,あるいは片側の唾液腺(特に耳下腺)の有痛性腫脹。

【2】幼児(乳児はまれ)から若年成人。

【3】地域の流行,発症者との接触機会。

【4】流行性耳下腺炎の既往がない,ワクチン接種歴がない。

【5】発熱,倦怠感などの全身症状。

症候の診かた

【1】潜伏期間:2~3週間(平均18日)。

【2】唾液腺腫脹:有痛性の耳下腺腫脹が多いが,顎下腺,舌下腺のみの場合もある。

【3】有症状期間

❶1~2週間の持続。

❷両側同時に腫脹もあるが,反対側の腫脹がずれて発症することがあり,その場合には期間が長くなる。

【4】唾液腺腫脹を伴わない熱性疾患,不顕性感染(低年齢者により多い)もある。

【5】通常は発熱があり,倦怠感なども伴う。

【6】合併症([合併症・続発症の診断]に記載)を伴うことがある。

検査所見とその読みかた

【1】スクリーニング検査

❶ウイルス性疾患で炎症反応は軽微。

❷血中・尿中アミラーゼが高値。

【2】血清抗体検査:酵素免疫測定法(EIA)によるIgM抗体陽性,IgG抗体の陽転化,あるいは有意上昇で診断。

【3】ウイルス学的検査:咽頭・唾液・髄液などからのウイルス分離やPCR法などによるウイルス遺伝子検出も有用。

確定診断の決め手

【1】臨床診断

❶地域流行があり,罹患歴がない両側耳下腺の腫脹。

❷非流行期,反復する唾液腺腫脹は他疾患を疑う。

【2】検査診断

❶[検査所見とその読みかた]に記した血清抗体検査,ウイルス学的検査で必要であれば検査で確定診断を行う。

❷ワクチン接種後3週間前後の耳下腺腫脹や髄膜炎などの副反応疑い例や合併症例にはウイルス学的確定診断を行うことが望ましい。

遺伝子検査で野生株とウイルス株の鑑別ができる

誤診しやすい疾患との鑑別ポイント

【1】反復性耳下腺炎

❶多くは片側で,腫脹を繰り返す。

❷発熱は伴わない。

❸エコー検査で耳下腺管の拡大所見。

【2】ムンプスウイルス以外のウイルス性耳下腺

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