診断のポイント
【1】重症例では,stridor(吸気時喘鳴)を伴う呼吸困難を呈する。
【2】咽頭,喉頭に灰白色の剝離しにくい偽膜を認め,剝離しようとすると出血する。
【3】わが国を含め,先進国での発症例はまれである。
【4】毒素による心筋炎発症例の死亡率は高い。
緊急対応の判断基準
【1】ジフテリアに限らずstridorは上気道狭窄による窒息の徴候を示す所見であり,気管挿管または気管切開の検討が必要な病態である。
【2】心筋炎,これに伴う循環不全などもジフテリア抗毒素血清の投与を急ぐ所見である。
症候の診かた
【1】症状:以下❶に加え❷の1項目以上が該当する場合は,【2】の病歴を確認する。
❶偽膜形成を伴う咽頭炎,喉頭炎,扁桃炎,気管炎のそれぞれ単独あるいは重複。
❷stridor,bull-neck(頸部腫脹),循環不全,急性腎不全,粘膜下あるいは皮下の溢血斑,心筋炎,死亡。
【2】病歴
❶本症の潜伏期間は,通常2~5日ではあるが,幅があるため2週以内の流行地域への渡航歴の有無,確定診断された発症者あるいは保菌例との接触歴の有無を確認する。
❷非ジフテリア種のCorynebacterium属菌種でもジフテリア毒素を産生し,ジフテリアを発症する場合があり,その際にも2週以内の乳製品あるいは家畜との接触歴を確認する。ワクチン接種歴も確認する。
【3】非気道系ジフテリア:頻度は低いが,眼結膜や泌尿生殖器の粘膜ジフテリアや熱帯地域で多い皮膚のジフテリアもある。
検査所見とその読みかた
心電図と心筋炎の有無を評価する生化学的マーカー,腎機能障害の追跡を行う。
確定診断の決め手
ジフテリアを疑う症例の検体から,Corynebacterium diphtheriaeが陽性となり,ジフテリア毒素産生が確認された場合に診断が確定される。
誤診しやすい疾患との鑑別ポイント
【1】先進国における本症の発症はきわめて少ないことから