診断のポイント
【1】国内外のマダニ生息域への立ち入り歴あるいはマダニを保有したペット・動物との接触歴の確認。
【2】患者皮膚上のマダニ虫体の発見や刺口の確認。
【3】潜伏期(接触歴から1~2週間での発症)の確認。
【4】発症初期の特徴的な症状の確認
❶回帰熱:特徴的な熱型。
❷ライム病:皮膚の限局性遊走性紅斑の出現。
症候の診かた
【1】回帰熱:マダニ刺咬から12~16日を経て,❶発熱期と❷無熱期を交互に3~5回程度繰り返す。
❶発熱期:3~7日間持続する頭痛,筋肉痛,関節痛,羞明,咳など(菌血症を伴う)。点状出血,紫斑,結膜炎,肝臓や脾臓の腫大,黄疸がみられることがある。
❷無熱期:5~7日持続する(菌血症を起こしていない)。
【2】ライム病
❶感染初期(StageⅠ):マダニ刺咬から3~32日を経て,限局性遊走性紅斑を呈する(図1図)。随伴症状としては筋肉痛,関節痛,頭痛,発熱,悪寒,全身倦怠感などのインフルエンザ様症状。
❷播種期(stageⅡ):体内循環を介して病原体が全身性に拡散し,皮膚症状(輪状の二次性遊走性紅斑),神経症状〔髄膜炎や髄膜脳炎,脳神経炎(Bell麻痺)〕,心疾患(房室ブロックや心筋炎・心膜炎),眼症状,関節炎,筋肉炎などがみられる。
❸慢性期(stageⅢ):感染から数か月~数年後に移行。
検査所見とその読みかた
ライム病も回帰熱もスピロヘーター科ボレリア属菌が病原体で,主な媒介マダニはシュルツェマダニである。
【1】回帰熱の検査診断:発熱期の血液を用いて各種検査診断を行う。
❶分離・同定による病原体の検出。
❷暗視野顕微鏡下鏡検による病原体の検出。
❸蛍光抗体法による末梢血スメアの観察による病原体の抗原の検出。
❹ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法による病原体遺伝子の検出(同定には16S rRNA遺伝子や鞭毛遺伝子の塩基配列決定など)。
【2】ライム病の検査診断
❶紅斑部の皮膚や髄液(髄