診断のポイント
【1】重症熱性血小板減少症候群(SFTS)はマダニ(フタトゲチマダニ,タカサゴキララマダニ)媒介性ウイルス感染症である。しかし,SFTS患者でマダニに咬まれた痕があったり,吸血されたりしていることが確認できるのは約半数にすぎない。
【2】SFTS患者の多くは50歳以上の壮齢・高齢者に多い。
【3】症状は発熱,全身倦怠感,下痢や嘔吐などの消化器症状で,リンパ節腫大も約半数で認められる。意識障害や出血症状を伴うこともある。
【4】末梢血液検査では白血球減少と血小板減少が認められる。CRPが陰性であることが多い。
【5】血液系悪性腫瘍が鑑別疾患に挙げられ,骨髄検査が実施されると,血球貪食症候群の所見が認められる。尿検査でほとんどの患者は尿潜血陽性を示す。
症候の診かた
感染性症状に加えて,末梢血液検査で白血球と血小板減少が認められ,また,重症感が認められる場合には,マダニに咬まれた痕のあるなしにかかわらず,SFTSを疑う。
検査所見とその読みかた
【1】末梢血液検査:白血球と血小板減少が認められる。
【2】生化学検査:肝機能酵素〔AST,ALT,乳酸脱水素酵素(LDH)など〕が上昇する。
【3】フェリチン値も上昇する。
【4】尿潜血陽性を呈する。
【5】重症例:腎機能障害を示す〔尿素窒素(BUN),クレアチニン(Cr)値の上昇〕。
【6】凝固系機能障害を示す検査所見を呈する。
【7】骨髄検査:多くの場合血球貪食症候群の所見が認められる。
確定診断の決め手
【1】SFTS疑い患者をみた場合には最寄りの保健所に相談する。
【2】診断するには,必ずウイルス学的検査を実施する。
❶SFTSウイルス(SFTSV)遺伝子検査は,地方衛生研究所や国立感染症研究所で実施される。また,抗体検査は国立感染症研究所で実施可能である。
❷急性期患者(発熱などの症状が出現して1週間以内)の患者血液中にSFTSVの存在を証明した