診療支援
診断

セラチア感染症
Infections caused by Serratia Species
松本 哲哉
(国際医療福祉大学主任教授・感染症学講座)

診断のポイント

【1】セラチア属の菌はグラム陰性の通性嫌気性桿菌であり,腸内細菌科に属し,健康なヒトにおいても腸管内などに常在している場合がある。

【2】Serratia marcescensがセラチア感染症の代表的な原因菌である。

【3】セラチア属は日和見感染症として発症する場合が多く,菌血症,敗血症,尿路感染症,肺炎,腹膜炎などの原因となりうる。

【4】診断には感染部位から得られた検体から菌を分離することが重要であるが,常在菌の汚染の可能性を考慮する必要がある。

【5】セラチア属は抗菌薬に耐性を示しやすいため,薬剤感受性検査の結果を踏まえて抗菌薬の選択を行う必要がある。

緊急対応の判断基準

 本菌による感染症は免疫不全状態の患者に起こることが多く,エンドトキシンショックや敗血症,播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation:DIC)を合併すると予後が不良になるため,集中治療としての対応が必要となる。

症候の診かた

 セラチア感染症に特有の症状はない。ただし,日和見感染症としてグラム陰性菌が分離された場合は,本菌による感染症も鑑別の1つに挙げておく必要がある。

検査所見とその読みかた

【1】セラチア属の同定においては,グラム陰性桿菌,オキシダーゼ陰性,ブドウ糖発酵,乳糖非分解,シモンズのクエン酸塩利用能陽性,VP反応陽性,インドール反応陰性,ゼラチン液化試験陽性,DNase陽性などの特徴を参考にする。

【2】S. marcescensは赤色色素を産生する株があり霊菌ともよばれているが,現在は色素産生株の割合は少なくなっている。

確定診断の決め手

【1】確定診断には検体からの菌の分離が必須であり,さらに常在菌による汚染との鑑別が必要である。

【2】血液や髄液など,通常無菌の検体から本菌が分離された場合は,感染症の原因菌として確定できる。

【3】喀痰や

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?