診断のポイント
【1】水痘に未罹患である(水痘はほとんどが顕性感染)。
【2】水痘ワクチン2回の接種歴がない。
【3】周囲における水痘の流行がある,あるいは周囲に帯状疱疹の発症者がいる。
【4】新旧さまざまな発疹が混在し,全身に散在する。
【5】水痘ワクチンが定期接種化され,水痘の発症数は減少している。
症候の診かた
【1】ヘルペスウイルス科の水痘・帯状疱疹ウイルス(varicella zoster virus:VZV)の初感染像が水痘であり,再活性化像が帯状疱疹である。
❶上気道に感染したVZVは所属リンパ節で増殖したのち,1次ウイルス血症を引き起こし,網内系組織に到達する。そこでさらに増殖して2次ウイルス血症を起こし,全身の皮膚上皮細胞に到達して細胞内で増殖して特徴的な水疱を形成する。
❷その後,特異免疫の獲得とともに水痘は治癒するが,VZVは脊髄後根神経節や三叉神経節に潜伏感染し,免疫能の低下時などに再活性化して神経支配領域に帯状疱疹を惹起する。
【2】通常,感染後2週間前後の潜伏期ののち,発疹が体幹や頭部・顔面に現れ,やがて全身に広がる。発疹は紅斑,丘疹で始まり,水疱,膿疱となり約1週間で痂皮化して治癒する。
【3】発疹が大きな偏りなく全身に散在することと,紅斑から丘疹,水疱,膿疱,痂皮までの新旧さまざまな発疹が混在することが水痘の特徴である(図1図)。
検査所見とその読みかた
【1】一般的な血液検査では,水痘に特徴的な所見はない。
【2】炎症反応が高値を示す場合,皮疹部における細菌による2次感染のことがある。特に高熱が続く場合,劇症型溶連菌感染症に注意する。
【3】肝機能障害を認める場合,肝炎の合併を考慮する。
確定診断の決め手
【1】流行状況の把握:水痘の初感染は不顕性感染が少ないので,周囲での流行状況の把握は診断に有用である。
【2】発疹の形態による診断:典型例では発疹の形態から臨床診断が可能で