診療支援
診断

感染性心内膜炎
Infectious Endocarditis (IE)
掛屋 弘
(大阪市立大学大学院教授・臨床感染制御学)

診断のポイント

【1】感染性心内膜炎(IE)の診断は,敗血症に伴う臨床症状,血液中の病原微生物(原因菌)の確認,疣腫をはじめとした感染に伴う心内構造の破壊の確認に基づいてなされる。

【2】発症素因,発症契機,症状,画像診断,血液培養所見,臨床経過などを総合して診断を確定する。

【3】IEの診断には,修正Duke診断基準を用いる(表1)。

【4】修正Duke診断基準は臨床基準と病理学的基準からなり,臨床基準はさらに,血液培養所見と心エコー図所見からなる大基準と,5つの臨床所見からなる小基準に分かれる。

【5】満たす項目とその数により,確診,可能性,否定的と判断される。

症候の診かた

 IEの臨床経過は多彩であり,急速に心不全が悪化する例から,慢性の経過をたどる例もある。慢性例では発熱が軽微で,IE特異的な症状が少なく,心不全症状も軽い。発熱や振戦などの急性炎症に由来する症状や食欲不振および体重減少,易疲労感など慢性炎症による症状を伴う。

【1】発熱:IEの約90%で認められる。診断基準では38℃以上の発熱は小基準の1つであるが,受診までに抗菌薬や抗炎症薬の投与を受けていると38℃未満の場合もある。また,高齢者や免疫不全状態では発熱を含めた典型的症状を欠くことがある。

【2】血管現象・免疫的現象:血管現象〔塞栓症を示唆する無痛性紅斑(Janeway疹)や点状出血斑,爪下出血斑など〕や免疫的現象〔有痛性皮疹(Osler斑),網膜出血斑(Roth斑)〕などに注意して診察を行う。

【3】心雑音:80%を超える症例で聴取されるが,右心系弁膜症や急性大動脈弁逆流症,ペースメーカリード感染などでは心雑音が聴取されない場合がある。

検査所見とその読みかた

 IEを示唆する臨床症状に加え,菌血症の確認および感染に伴う心病変の確認のため,血液培養と心エコー検査を行う。

【1】血液培養

❶抗菌薬投与前に少なくとも3セット提

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