診断のポイント
【1】表1図にHIV検査を考慮すべき状況をまとめた。
【2】性感染症の発症または既往例,帯状疱疹,結核発症例では本症の可能性を念頭におく。
【3】原因不明の慢性下痢,全身リンパ節腫脹,10~20kg/年の体重減少も積極的に本症を疑う。
【4】日本の妊婦におけるHIVスクリーニング陽性例は95%以上が偽陽性(非感染)である。
症候の診かた
【1】急性HIV感染症
❶発熱(±発疹,頸部リンパ節腫脹):HIV感染後2~6週頃に3分の2程度の患者でインフルエンザ様症状が出現する。多くは数週以内の経過で自然軽快するため,見逃されている患者が多い。経過中の発疹の出現,頸部リンパ節腫脹があれば,可能性はより高くなる。
❷意識障害
■頻度は不明だが,急性感染例の一部で意識障害を呈する。発熱による発症から1~3週ほど遅れて出現することが多い。軽度の意識障害から昏睡状態まで程度はさまざまである。
■頭部MRIでは異常所見を認めないことが特徴である。
❸血球貪食症候群
■頻度不明で類似の病態を呈する。
■治療としてステロイド薬が使用された場合,HIV感染による免疫機能障害を助長する可能性があるため,本症と診断した場合には急性HIV感染を除外すべきである。
【2】HIV感染症
❶慢性下痢
■HIV患者の10~40%が経過中に原因を特定できない慢性下痢症を発症することが知られており,HIV enteropathyとよばれている。
■下痢症精査の消化管内視鏡検査前のスクリーニング検査でHIV感染が診断される例も少なくない。
❷リンパ節腫脹
■後頸部に触知されることが多いが,全身性にみられることもある。
■無痛性で年余にわたり触知され,病期の進行とともに消失する傾向がある。
■悪性リンパ腫が疑われ,リンパ節生検前のスクリーニング検査でHIV検査が診断される例を経験する。
❸口腔カンジダ症
■免疫不全が進行すると,最初にみられる頻度の
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