診断のポイント
【1】易感染状態などの基礎疾患や薬歴。
【2】一般抗菌薬に不応性の発熱。
【3】特徴的な画像所見。
【4】真菌学的検査(抗原検査やβ-D-グルカン検査などの血清補助検査や培養検査)が陽性。
緊急対応の判断基準
【1】血液から酵母様真菌が検出された場合:中心静脈カテーテルを抜去し,抗真菌薬による経験的治療を開始。
【2】肺真菌症で血痰や喀血がある場合:気管支動脈塞栓術や外科的治療が必要となることもあり,専門医や専門施設に相談。
【3】輸入真菌症を疑う場合:細菌検査室での2次感染も報告されているため,検査・診断に入る前に,専門医や専門施設に相談。
症候の診かた
【1】発熱:免疫不全やICU入院中などのリスク因子があり抗菌薬不応性発熱がある場合,本症を念頭におく。
【2】視力低下,霧視:カンジダ血症では血行性転移により真菌性眼病変を生じる。黄斑部病変や硝子体浸潤がないと眼症状がないため,血液培養で酵母様真菌陽性の場合は,ルーチンに眼科的検査が必要。
【3】咳嗽,喀痰,血痰:肺真菌症で認める。
❶慢性肺アスペルギルス症:抗酸菌症,慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの既存の肺疾患に合併する。
❷侵襲性肺アスペルギルス症:ムーコルや一般細菌による肺炎との鑑別が必要。
❸肺クリプトコックス症:無症状の場合もあり,健診異常で発見されることもある。
【4】頭痛,嘔吐,意識障害:免疫不全患者でみられた場合はクリプトコックス髄膜炎を念頭におく。クリプトコックス髄膜炎と診断された場合はHIV感染症がないかどうか検討する。
検査所見とその読みかた
【1】血清学的補助診断
❶β-D-グルカンは多くの深在性真菌症で上昇する。クリプトコックス症やムーコル症で上昇しにくく,セルロース系透析膜や血液製剤の使用で偽陽性のことがある。
❷保険適用のある特異的な抗原検査を表1図に示す。
❸アスペルギルス抗体検査は保険適用がないが,慢性肺アスペ