診断のポイント
【1】アニサキス亜科に属する線虫(Anisakis属またはPseudoterranova属)の幼虫による感染症をアニサキス症と総称する。
【2】感染源となる魚介類(サバ,アジ,イワシ,サンマ,イカ,サケ,スケトウダラ,ホッケなど)の生での摂取歴がある急性腹症。
【3】胃アニサキス症:感染源の摂取から1~6時間後の悪心・嘔吐,心窩部痛。
【4】小腸アニサキス症:感染源の摂取から1~10日後のイレウス症状。
症候の診かた
【1】急性腹症に含まれる他の疾患(胃潰瘍,腸閉塞,胆囊炎,胆石症,胆管炎,膵炎,急性冠症候群,大動脈解離など)との鑑別が重要である。
【2】急性腹症の診療においては,本症を念頭に食歴の問診を行う。
【3】本症の発症にアレルギー性機序の関与が知られており,じん麻疹やアナフィラキシーショックを合併することがある。
【4】シュードテラノーバ症はほとんどが胃の感染例である。全く無症状に経過し,突然,強い咳嗽とともに幼虫が吐出される例も少なくない。
検査所見とその読みかた
【1】胃アニサキス症
❶上部消化管内視鏡により虫体を確認する(図1図)。
❷摘出した虫体を形態的あるいは遺伝子学的に同定する。
【2】小腸アニサキス症
❶腹部単純X線写真でイレウス像(小腸ガスやニボー形成)がみられるが,非特異的所見である。
❷腹部造影CTでの造影効果を伴う小腸の限局性粘膜下浮腫,同部位を閉塞起点とする腸閉塞像,腹水貯留は小腸アニサキス症に特徴的な所見として知られている(図2図)。
【3】いずれも発症間もない場合には,末梢血好酸球増多は認められない。
確定診断の決め手
【1】胃アニサキス症:上部消化管内視鏡の観察と摘出した虫体の同定による。
【2】小腸アニサキス症:腹部造影CTでの特徴的な所見およびペア血清を用いたアニサキス特異的IgG抗体またはIgE抗体の有意な上昇をもって確定診断とする。
誤診しやすい疾患と
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