[Ⅰ]リンパ系糸状虫症
診断のポイント
【1】流行地(アフリカ・アジア)への渡航・滞在歴。
【2】悪寒を伴う熱発作。
【3】非圧痕浮腫(リンパ浮腫,陰囊水腫)。
【4】乳び尿。
【5】象皮病。
症候の診かた
【1】熱発作(急性糸状虫性リンパ管炎):成虫の死滅それに伴う共生細菌ボルバキアの放出による。
【2】非圧痕浮腫(リンパ浮腫,陰囊水腫):リンパの循環障害による。
【3】乳び尿:うっ滞したリンパ液の尿路への漏出。
【4】細菌および真菌感染(急性皮膚リンパ管腺炎):皮膚のバリア機能の低下とリンパの環流障害に起因する。
【5】象皮病:上述の皮膚リンパ管腺炎を繰り返した帰結としての皮膚の病態。
検査所見とその読みかた
【1】血液検査:好酸球の増加(熱帯性肺好酸球増多症),IgE増加を認める。
【2】寄生虫学的検査:通常,ミクロフィラリアは夜間の定期出現性を示すため,夜間採血した末梢血液中に有鞘のミクロフィラリア(~260μm)を検出,ギムザ染色後にミクロフィラリアの形態学的特徴から種を鑑別。
【3】免疫学的検査:免疫クロマトグラフィ(ICT)テストでバンクロフト糸状虫の抗原を検出,マレー糸状虫とチモール糸状虫の抗体検出キットも有用(国内未承認診断薬)。
【4】DNAの検出:血液から各糸状虫に特異的なDNA配列をPCRにて増幅・検出。
【5】超音波検査:まれに拡張したリンパ管の中で動く糸状虫成虫を観察できる。
確定診断の決め手
[検査所見とその読みかた]に記載の【1】~【4】が決め手となる。
誤診しやすい疾患との鑑別ポイント
原発性および続発性リンパ浮腫との鑑別が重要で,上記【1】~【4】がポイントとなる。
確定診断がつかないとき試みること
各糸状虫に対する特異抗体を検出する血清診断が鑑別に有効な場合もある。本症は基本的には慢性疾患なので経過観察で差し支えない。
さらに知っておくと役立つこと
リンパ系糸状虫の内訳は,バンク