診療支援
診断

エキノコックス症
††
Echinococcosis (Hydatid Disease)
横尾 英樹
(旭川医科大学准教授・外科学講座肝胆膵・移植外科学分野)

診断のポイント

【1】単包条虫と多包条虫があるが,わが国に多いのは多包条虫であり北海道を中心に分布している。

【2】CT,MRIで石灰化を伴う多房性の(時に単包性)囊胞性病変を認めた場合,居住歴,生活歴などからエキノコックス症を疑う。

【3】上記画像所見のほかに血清診断〔ELISA法,ウエスタンブロット(WB)法,Em18〕によって確定診断を得る。

症候の診かた

【1】ほとんどの症例で自覚症状がない。北海道ではエキノコックス症検診(1次スクリーニング:血清検査ELISA法,2次スクリーニング:超音波検査)によって毎年10例前後発見されている。

【2】居住歴,湧き水や井戸水などの飲水,キタキツネやイヌなどの接触歴は確認する。

検査所見とその読みかた

【1】スクリーニング検査

❶エキノコックス症検診ではELISA法による血清診断を行っており,擬陽性や陽性であれば専門機関に紹介している。

❷追加の血清診断としてWB法や旭川医科大学で開発されたEm18があり,陽性であれば確定診断となる。

【2】腹部単純X線写真:20%の症例に石灰化を認める。

【3】超音波検査:顆粒状,不整形の高エコーや囊胞エコーなどが種々の程度に混在し描出される。

【4】腹部CT:石灰化は80%の症例に認められ,大囊胞,小囊胞が混在したパターンを呈するがまれに単房性の場合もある。

【5】腹部MRI:T1で低信号,T2で低~等信号を呈し周辺に小囊胞を反映する小さな高信号があることが特徴的な所見である。

確定診断の決め手

 多胞性エキノコックス症患者の血清検査(北海道立衛生研究所)は,酵素抗体法〔ELISA法(0.5OD値<)〕で90%,WB法が95%の陽性率を呈し,これに超音波検査,CTなどの画像で肝の腫瘍性病変を認めれば診断は確定する。

誤診しやすい疾患との鑑別ポイント

【1】単純肝囊胞:巨大で単房性の肝囊胞が鑑別に挙がるが,壁の肥厚や造影効果がな

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