[Ⅰ]住血吸虫症
診断のポイント
【1】ヒトの住血吸虫症には,日本住血吸虫症,メコン住血吸虫症,マンソン住血吸虫症,インターカラーツム住血吸虫症,ビルハルツ住血吸虫症がある(表1図)。
【2】流行地域への旅行歴(表1図)が最も重要である。湖水や池,河川の水との接触の有無を確認する。季節や地域,接触の程度によっても危険度は大きく変わる。
【3】感染の時期を推定し,急性あるいは慢性期の特徴的な症状や検査所見を考慮する。
【4】血液検査では好酸球数の著明な上昇がみられる。
【5】排泄物中の虫卵検査あるいは血清検査による特異抗体あるいは血中尿中循環抗原の検出。
症候の診かた
【1】急性期の症状:住血吸虫の種や感染強度,宿主因子などで変わる。
❶経皮感染後2~3日:侵入部位にかゆみを伴う丘疹状の紅斑が出現する。
❷経皮感染から約1週間:肺へ到達し,咳などの症状が現れる。
❸経皮感染後4~8週:成熟した住血吸虫は門脈や膀胱静脈叢で産卵を開始するので,この際片山熱とよばれる急性症状を呈する。
■発熱,全身性リンパ節腫脹,および肝脾腫大が主な症状だが,末梢血では著明な好酸球増多を示す。
■日本住血吸虫やマンソン住血吸虫のような腸管型では虫卵の粘膜刺激による下痢や腹痛,ビルハルツ住血吸虫では膀胱の組織破壊による肉眼的血尿がみられる。
【2】慢性期の症状:旅行後急性期に気づかず,慢性期に入った患者を診ることも十分にありうる。この場合も旅行歴や水接触を見逃さないようにする。
❶門脈域に寄生する住血吸虫症(マンソン,日本,メコン,インターカラーツム)
■虫卵を排出する数か月~数年の間,腸症状として差し込むような激しい腹痛と出血を伴う下痢を起こす。また疲労感や日常作業の困難さなどを訴える。
■1年ほど経つと肝脾に虫卵が沈着し門脈域に肉芽腫を形成して肝腫大を起こすが,これは感染の強度(感染数)に相関している。
■さらに経過すると門脈圧亢
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