診療支援
診断

肺吸虫症
††
Paragonimiasis
松岡 裕之
(長野県飯田保健福祉事務所・所長)

診断のポイント

【1】サワガニ,モクズガニ(上海ガニ)あるいはイノシシ肉,シカ肉を生で食べた経験がある。

【2】咳嗽,血痰,胸部痛,背部痛,発熱がみられる。

【3】胸部X線写真やCTで胸水,気胸,肺実質内に結節がみられる。

【4】末梢血液中の好酸球増多,また血清総IgE値が高い。

【5】抗ウェステルマン肺吸虫抗体あるいは抗宮崎肺吸虫抗体が陽性である。

症候の診かた

【1】食物摂取歴は数週間前から2年前までさかのぼって尋ねる。

【2】画像所見のみで自覚症状がない症例もある(図12)。

【3】本症による血痰は鮮紅色を呈さない。血痰の出ない症例もある。

検査所見とその読みかた

【1】末梢血液中の好酸球増多はほぼ必発である。

【2】抗肺吸虫抗体もほぼ必ず陽性になる。

【3】血痰を伴う症例では喀痰または糞便中に虫卵が検出される。

【4】胸水中に好酸球増多を認める。抗肺吸虫抗体も高い。

【5】抗体検査によりウェステルマン肺吸虫症,あるいは宮崎肺吸虫症の鑑別ができる。

確定診断の決め手

【1】食歴が確認されること。

【2】抗肺吸虫抗体が陽性であること。

【3】喀痰または糞便中に肺吸虫卵を確認。

誤診しやすい疾患との鑑別ポイント

【1】肺癌:腫瘍マーカー高値,好酸球数正常,腫瘍細胞確認。

【2】肺結核():好酸球数正常,結核菌陽性。過去には結核療養所に肺吸虫症患者が入所させられ,症状が改善しないまま年余を過ごしていた例が多々あった。

【3】他の寄生虫症:マンソン孤虫症顎口虫症イヌ糸状虫症など。それぞれの抗体が上昇している。

確定診断がつかないとき試みること

 プラジカンテルを使って治療的診断を試みる。

合併症・続発症の診断

 脳肺吸虫症:肺吸虫が脳内に居住し,虫卵の産出を続けることがある。寄生部位に応じた神経症状が出る。頭部CTで虫囊を確認,抗肺吸虫抗体の陽性を確認する。

経過観察のための検査・処置

 胸部X線写真,胸部CTにより虫体

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