診断のポイント
【1】獣肉・獣肝・淡水魚・両生類や爬虫類生物の生食や加熱不完全調理食の摂取歴がある。
【2】皮膚に線状皮疹が生じ,日ごとに伸長する(皮膚爬行疹)。
【3】皮膚に生じた腫脹が消退し,再び別の場所に出現する(移動性皮下腫瘤)。これを繰り返す。
【4】末梢好酸球数が増多する。
【5】皮膚以外にも肺・肝臓・脳・脊髄・眼が幼虫移行の多い臓器である。皮膚と同じく,臓器内の幼虫移動に伴う病変の位置の変化が観察されることがある。
症候の診かた
【1】皮膚爬行疹(図1図)
❶有棘顎口虫以外の顎口虫(ドロレス顎口虫,剛棘顎口虫,日本顎口虫)や旋尾線虫の感染で認め,紅斑を伴うことが多い。
❷顎口虫感染による皮疹の伸長速度は1日に数cm程度であるが,旋尾線虫による皮疹の伸長はそれより速い。
❸動物由来の鉤虫(ブラジル鉤虫,イヌ鉤虫,セイロン鉤虫)による爬行疹では,幼虫が表皮内を移行することが多く,水疱形成を伴う。
【2】移動性皮下腫瘤
❶顎口虫のなかでも皮膚の深部を移動する有棘顎口虫の感染に多い。
❷皮下腫脹が現れ自然に消退し,数日~数か月後に別の場所に出現する。
❸この過程を幾度か繰り返し,数年に及ぶこともある。
❹通常は痛みを伴わない。
【3】神経学的異常,頭痛,視力障害:移行先が脳・くも膜下腔・脊髄・眼球・網膜の場合は,症状が出ることが多い。
【4】無症状でも,肺や肝臓への移行を認めることがある。
【5】腹痛:旋尾線虫,顎口虫が腸管壁に刺入し,イレウス様症状を呈することがある。
検査所見とその読みかた
【1】血液検査
❶好酸球増多,血清IgE上昇は重要。
❷幼虫が脳脊髄に移行する広東住血線虫症では,髄液検査で好酸球増多を認める。
【2】皮膚生検
❶幼虫が摘出あるいはその一部が検出されれば,幼虫移行症と診断できる。
❷寄生虫種の同定は,専門機関あるいは専門家に依頼する。
❸形態的観察や切片から抽出した核酸を用いて遺伝子診断を行う
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