[Ⅰ]腸アメーバ症(赤痢アメーバ症)
診断のポイント
【1】男性同性愛歴,知的障害者施設利用歴,海外渡航歴がある。
【2】軟便・水溶性便から粘血便までの多様な下痢,頻便,しぶり腹,鼓腸,腹痛など多様な消化管症状を示す。
【3】発熱はまれである。
【4】数か月から数年に慢性に増悪・軽快を繰り返すことがある。
【5】典型例ではイチゴゼリー様の粘血便を示す。
緊急対応の判断基準
通常,移送の必要はないが高度の出血(粘血便),広範囲における病変,消化管穿孔の可能性がある場合は,専門家のいる病院に移送する。
症候の診かた
【1】感染例の約9割は無症候性であるとされる。
【2】便の性状はさまざまであり,全身状態は一般的によい。
【3】腸管外への播種,特に肝膿瘍などが全体の約1割で認められる。
検査所見とその読みかた
【1】糞便あるいは糞便に付着した粘液の生鮮標本中に,赤血球を含み,偽足を出して運動する20~50μm程度の栄養型を検出する。
【2】糞便あるいは糞便に付着した粘液から作成されたHE染色標本で,赤血球を貪食した栄養型を検出する。
【3】大腸内視鏡の洗浄液中に,上記のような運動性の栄養型を検出する。大腸内視鏡での好発部位は回盲部とS状結腸・直腸である。
【4】大腸内視鏡での生検組織の染色標本の顕微鏡検査で,潰瘍内に栄養型を検出する。しばしば正常組織の間に潰瘍底の深い,フラスコ状の潰瘍を認める。
【5】無症候例では,大腸内視鏡のびらん・潰瘍から組織診断で発見されることがある。糞便中からは通常囊子(シスト)のみ検出される。集卵法(ホルマリンエーテル法,MGL法)により検出感度が増加する。鉄ヘマトキシリン染色などを用いる。
【6】血清反応で,補体結合反応,蛍光抗体法,ELISA法,ゲル内沈降反応などが用いられるが,過去の感染と鑑別できない。
確定診断の決め手
【1】最も簡単な確定診断は,糞便などの生鮮標本中に,赤血球を含み
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