診断のポイント
【1】発熱とマラリア流行地(図1図)への滞在歴がある場合にはマラリアを鑑別診断に入れる。
【2】末梢血のGiemsa染色塗抹標本でマラリア原虫を同定する。
【3】重症熱帯熱マラリアを見逃さないようにする。
【4】赤血球のマラリア感染率は重症度を評価するうえで必須の指標である。
【5】三日熱や卵形マラリアでは再発があるため,潜伏期間があてにならないことがある。
緊急対応の判断基準
【1】マラリアの診断・治療経験がない場合は専門施設への移送を考慮する。
【2】重症マラリアが疑われる場合は救急車で専門施設へ移送する。
【3】移送時には急変に備え,呼吸循環管理を徹底する。
症候の診かた
【1】流行地滞在歴の聴取:マラリア流行地への滞在歴を詳細に聞くことが診断の第1歩である。
❶マラリアを疑う場合,滞在地,経由地,滞在期間と活動内容,蚊による吸血,抗マラリア薬の予防内服歴,蚊忌避剤(虫除けスプレー,蚊取り線香)使用の有無についての情報が重要である。
❷マラリアを媒介するハマダラカは主に夜間に吸血する。このため,流行地滞在中の夜間の行動についてもよく聞いておく。
【2】潜伏期:1週間~1か月程度。ただし,四日熱マラリアでは長い傾向がある。また,三日熱マラリアと卵形マラリアでは肝臓の休眠体からの再発が起こる。この場合は1か月を超えて発症する。
【3】症状
❶悪寒,倦怠感,発汗,頭痛,咳,食欲不振,嘔気,嘔吐,腹痛,下痢,関節痛,筋肉痛など,発熱に加え,さまざまな症状を呈し多彩である。
❷発熱はしばしば40℃を超える。
❸貧血,黄疸,肝脾腫などが観察されることがある。
❹重症マラリアかどうかを見極めることが大切である(表1図)。
検査所見とその読みかた
【1】生化学検査
❶通常検査する生化学検査でマラリア特異的な所見を呈するものはない。白血球は正常,もしくは低下することが多い。血小板は低下することが多い。貧血もしばし
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