診断のポイント
【1】免疫不全状態の日和見感染症。
【2】原因不明のリンパ節腫脹,脳炎,脳膿瘍,肺炎,心筋炎,肝脾腫,網脈絡膜炎,ぶどう膜炎など。
【3】初感染の妊婦,水頭症,脳内石灰化。
【4】生肉の摂取,ネコの飼育歴,高浸淫国(ブラジル,フランスなど)出身者。
【5】HIV感染症例に強力な抗レトロウイルス療法(anti-retroviral therapy:ART)開始後の免疫再構築症候群(immune reconstitution inflammatory syndrome:IRIS)。
症候の診かた
【1】先天性トキソプラズマ症:児の胎内死亡,流産,早産,死産,脳内石灰化,水頭症,小頭症,網脈絡膜炎,小眼球症,精神運動発達遅延,けいれん,肝脾腫,黄疸,リンパ節腫脹,発疹,発熱など。
【2】後天性トキソプラズマ症
❶ほとんどの場合が不顕性であるが,免疫不全に陥ると顕性になる。
❷脳炎,脳膿瘍,肺炎,心筋炎,リンパ節腫脹,肝脾腫,網脈絡膜炎,ぶどう膜炎などを生じる。それらの臨床症状として,頭痛,発熱,混迷,意識障害,筋力低下,片麻痺,小脳性運動失調,脳神経麻痺,感覚障害,失語症,けいれん,人格変化,錐体外路症状,咳嗽,視野障害,複視,視力障害,眼痛,毛様充血など。
【3】トキソプラズマ性網脈絡膜炎(眼トキソプラズマ症)
❶先天性・後天性・初感染・再燃のいずれの病型にもみられる。
❷視力障害・毛様充血・眼痛・羞明・斜視・流涙などの症状を訴える。
❸臨床所見:滲出性網脈絡膜炎(乳白色の境界不鮮明な限局性滲出性病巣)(図1図),硝子体混濁,陳旧性網脈絡膜炎,黒色壊死性瘢痕病巣,娘病巣,網膜血管炎,網膜動静脈閉塞がみられる。
❹先天性
■通常,両眼性で黄斑部の陳旧性瘢痕病巣で発見されることが多いが,時として,網膜周辺部や乳頭周囲のこともある。
■瘢痕病巣の約30%が再発し,瘢痕病巣の近くに娘病巣となる。
■不顕性
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