診療支援
診断

■中毒性疾患の最近の動向
浅利 靖
(北里大学教授・救命救急医学)


 中毒の診療は,2000年代に入り進化した。それ以前はエンピリックな治療が主体であったが,1997年にAACT/EAPCCT(American Academy of Clinical Toxicology/European Association of Poisons Centers and Clinical Toxicology)が急性中毒の消化管除染についてのposition paperを発表し,中毒診療もEBMを重視するようになった。わが国では,日本中毒学会が急性中毒の標準治療と主な起因物質に関する中毒診療のガイドラインを検討し,2007年に日本中毒学会が推奨する「急性中毒標準診療ガイドライン」が刊行された。同時に学会のホームページで急性中毒の標準治療としての消化管除染(胃洗浄,活性炭,緩下剤,腸洗浄),強制利尿,血液浄化法,体温管理,呼吸管理,循環管理,けいれん対策が公開された。また,和歌山毒物混入カレー事件などの毒物混入事件の頻発を契機に,1998年に全国73か所の救命救急センターなどに毒薬物分析のために分析機器が配備された。2014年度診療報酬改定では,救命救急入院料の急性薬毒物中毒加算が改定され,従来の機器分析だけでなく簡単な検査への加算も追加された。

 2014年,日本中毒学会が全国の救急医療施設に急性中毒の治療についての調査を実施したところ,「中毒といえば胃洗浄」という以前の傾向はなくなり,胃洗浄は適応が限定され一部の症例にのみ実施されていた。しかし,胃管は,推奨サイズよりも小口径が使用されている傾向がみられた。活性炭については,以前は限られた施設でのみ投与されていたが,投与する施設が増大すると同時に適応症例が限定される傾向もみられた。投与量は,推奨量が投与されていたが,懸濁液は推奨量より少ない傾向がみられた。標準治療の公開から7年後に普及の兆しが認められた

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