循環器作動薬は,高血圧や不整脈のほか多くの疾患に対する治療目的に処方されている。ここでは循環作動薬のなかで特に頻度の高いβ遮断薬中毒とカルシウム拮抗薬中毒について述べる。
[Ⅰ]β遮断薬中毒††
診断のポイント
【1】高血圧や不整脈,心不全の既往。
【2】内服歴や過量内服を示唆する所見(薬包など)がある。
【3】低血圧や徐脈。
【4】せん妄,昏睡,けいれんの出現。
【5】低血糖,気管支喘息の出現。
緊急対応の判断基準
ショックや不整脈を伴う重症例であれば,高度医療機関への搬送を考慮する。
症候の診かた
【1】非徐放薬の過量内服では,服用後2時間以内,長くても6時間以内に症状が出現する。
【2】徐放薬の過量内服では,服用後24時間経過し症状が出現することがある。
【3】心収縮力の低下によりショックをきたす。
【4】意識障害やけいれんは低血圧に伴う中枢神経の虚血により起こると考えられている。
【5】β受容体遮断作用により気管支喘息や低血糖が出現することがある。
検査所見とその読みかた
【1】血液検査:低血糖に注意する。
【2】血液ガス分析:低酸素血症,酸塩基平衡異常の確認,乳酸値の高値。乳酸値は循環不全の程度を反映する。
【3】胸部X線写真:肺水腫をきたす場合がある。
【4】12誘導心電図:徐脈や房室ブロック,QRS時間の延長,torsade de pointesなどの心室性不整脈の出現に注意する。
【5】心エコー検査:心機能の評価を行う。重症例では心収縮の低下を伴う。
【6】重症例では,動脈ライン,肺動脈カテーテルや循環動態モニタを用いて集中治療管理を行う。
確定診断の決め手
【1】既往歴,内服歴,現病歴,臨床所見から確定診断を行う。
【2】血中濃度の測定は行うことができるが,時間を有することや専門機関での検査が必要であることから臨床的に有用とはいえない。必要があれば検査機関や高度医療機関へ依頼する。