診療支援
診断

違法・脱法薬物
Intoxication of New Psychoactive Substances
小林 憲太郎
(国立国際医療研究センター病院救命救急センター救急科)

診断のポイント

【1】30~40歳台の男性。

【2】精神・神経症状が認められる。

【3】交感神経刺激症状(頻呼吸,頻脈,高血圧,高体温)。

【4】違法・脱法薬物が疑われる所持品。

【5】違法・脱法薬物の使用歴がある。

緊急対応の判断基準

【1】けいれん重積を伴う場合:気管挿管・人工呼吸および持続鎮静など集中治療を要する場合がある。

【2】心室細動など致死性不整脈を伴う場合:すみやかに二次救命処置を施行する。

症候の診かた

【1】精神・神経症状:含有成分によって症状は異なり一定ではないが,交感神経興奮症状,けいれんを含む中枢神経興奮症状が認められることが多い。

【2】嘔気・嘔吐:合成カンナビノイドによる中毒ではしばしばみられる。

【3】高熱を伴うこともある。

検査所見とその読みかた

【1】尿薬物定性検査(トライエージTMDOA)

❶いわゆる危険ドラッグではトライエージTMDOAなどの尿薬物定性検査では検出されない薬物がほとんどである。

❷しかし,フェンシクリジン類似物質など一部検出される薬剤もあり,またトライエージTMDOAで検出できるアンフェタミンなどの使用の可能性も十分に考えられるため,スクリーニング検査として施行を考慮する。

確定診断の決め手

【1】現病歴や症状から違法薬物の使用を疑うことが重要。

【2】薬物使用歴の情報や所持品に違法薬物があれば確定的な可能性が高い。

【3】本来の意味での確定診断は分析機器による定量検査であるが現実的ではない。

誤診しやすい疾患との鑑別ポイント

【1】中枢神経感染症〔髄膜炎(),脳炎()〕

❶末梢血白血球数の増加,CRPの上昇。

❷髄膜刺激徴候。

❸髄液検査による細胞数の上昇。

【2】精神疾患(悪性症候群を含む)

❶精神疾患の既往がある。

❷抗精神病薬の新規追加,中断。

❸筋強剛を認める。

【3】離脱症状(アルコール,薬物など)

❶アルコール多飲歴。

❷飲酒や治療薬物の中断。

確定診断がつかないと

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