診断のポイント
【1】状況を聴取し,何をどれくらいの量,いつ飲んだのかを確認する:飲んだ薬剤を容器ごと病院に持ってこさせて内容を確認したほうが正確な情報を把握できる。
【2】誤飲したのか,自殺企図などから意図的に飲んだのかを確認する:誤飲では,服薬量が少なく臨床的に問題となる可能性が低いが,自殺企図による服用では量が多く危険である。
緊急対応の判断基準
【1】バイタルサインの確認を行い,気道,呼吸,循環に異常があれば,末梢静脈確保,気管挿管などの緊急処置を行い,高次医療機関へ転送する。
【2】意識障害がなければ,消毒薬による刺激を軽減するとともに,消化管粘膜保護のために,応急処置として牛乳を飲ませる。
症候の診かた
【1】口腔~咽頭の灼熱感と疼痛
❶口腔内,上咽頭を観察し,発赤,粘膜の剝離がないか診察する。
❷上記を認めれば,さらに喉頭鏡を用いて喉頭浮腫がないか診察する。
【2】呼吸苦:喉頭浮腫による上気道閉塞,誤嚥による呼吸障害がないか診察する。
【3】腹痛,下痢,嘔吐:消化管粘膜刺激により消化器症状を呈する。
【4】アナフィラキシー:クロルヘキシジン中毒でアナフィラキシーを起こすことが知られており,膨隆疹や発赤疹などを認めたらアナフィラキシー症状がないか診察する。
検査所見とその読みかた
【1】内視鏡所見
❶食道から胃にかけて発赤,びらんを認めることがある。
❷程度によっては,経口摂取をやめて経過をみる必要がある。
【2】胸部CT
❶食道穿孔により縦隔炎を合併すると生命にかかわる。
❷初診時に胸部CTを撮影し,再検時と比較するコントロールとする。
【3】腹部CT
❶過酸化水素水中毒では消化管内で酸素ガスが発生し鼓腸する。
❷胃拡張の所見があれば,胃管を挿入する。
確定診断の決め手
内視鏡所見:服用から時間が経過している場合は,内視鏡操作により消化管穿孔を招くことがあるので慎重に検査する。