診断のポイント
【1】6~11か月の乳児。
【2】家族や周囲に喫煙者がいる,タバコや灰皿が乳幼児の手の届くところにある。
【3】口唇や口腔内,吐物にタバコの葉を認めたり,口腔からタバコ臭がする。
【4】乳幼児の突然原因不明な顔面蒼白,発汗,嘔吐。
【5】保護者の目撃情報。
緊急対応の判断基準
【1】タバコの毒性
❶ニコチンの致死量:タバコの主要毒成分であるニコチンは,ヒトの成人致死量は50~60mg,乳幼児の致死量は10~20mgとされ,青酸カリウムの成人致死量150~300mgと比較しても猛毒であることがわかる。しかし,ヒトの致死量についての文献的な根拠はない。
❷タバコ1本に含まれるニコチン量:7~24mgで,経口摂取した場合の致死量は乳幼児で1本,成人で2本に相当する。タバコのパッケージに記載されているニコチン量は,煙の中に含まれている量であり,実際の含有量よりも少ない。
【2】緊急対応の判断基準および処置
❶タバコ中毒の可能性が少しでもある場合:誤食したと仮定して必要な対処を行う。
❷無症状の場合:無処置とし,経過観察を行う。4時間観察して問題がなければ帰宅させてよい。
❸嘔吐し吐物を誤嚥した可能性がある場合:すみやかに専門施設に転送する。
❹意識障害,けいれん,血圧低下,徐脈,不整脈,呼吸抑制などがみられた場合:❸と同様に対応する。
❺タバコを液体に浸漬した場合:ニコチンは30分で100%が溶液に浸出するため,吸殻の溶媒はニコチン濃度が高く毒性も強く,過去には致死例の記載もある。❸と同様に対応する。
【3】転送前の最低限の処置
❶乳幼児では気づいた時点ですぐ吐かせる。
❷水や牛乳を飲ませることはタバコを腸に押し流し,吸収が促進されるので禁忌である。
症候の診かた
【1】ニコチンは嘔吐中枢に作用して催吐を誘発し,誤食された葉タバコは重篤な症状が出る前に大部分が体外に排泄される。催吐作用は2~5mgとされ,