診断のポイント
【1】硫化水素に曝露された状況の確認。
❶硫化水素は気体で,主に吸入により発症する。
❷温泉や火山だけでなく,下水道,排水処理施設,穀物や飼料の貯蔵タンクなどの閉鎖空間でも硫化水素中毒は起こる。
❸自殺目的の硫化水素の発生に,硫化物含有入浴剤が使用された事例もある。
【2】腐卵臭:高濃度では臭いを感知しないことがある。
【3】酸素欠乏による徴候。
【4】呼吸器刺激症状。
【5】眼,皮膚,粘膜などの刺激症状。
緊急対応の判断基準
【1】防護衣,防護マスクで2次被害を防ぐ。
【2】脱衣と流水による除染。
【3】心肺停止に対しては心肺蘇生法を実施する。
【4】ショックや重篤な呼吸不全には気管挿管下で高濃度酸素による人工呼吸を優先する。
症候の診かた
【1】酸素欠乏症:意識障害,チアノーゼ,SpO2低下,低酸素血症,呼吸停止,心停止。
❶硫化水素はミトコンドリア内でチトクロームcオキシダーゼのFe3+に結合し,細胞呼吸を阻害する。
❷硫化水素ガスの発生した閉鎖空間では吸入酸素濃度低下による酸素欠乏も生じる。
【2】皮膚・粘膜,眼刺激症状:疼痛,瘙痒,結膜充血,眼痛,流涙,羞明。水に溶けやすく,眼や皮膚粘膜の刺激作用を有するため,それらの刺激症状はガスに曝露されたことを示している。
【3】中枢神経症状:失神,けいれん,意識障害,頭痛,めまい,見当識障害,脱力。
【4】循環器症状:血圧低下または上昇,徐脈,頻脈,不整脈。
【5】呼吸器症状:呼吸停止,呼吸困難,気道刺激,喘鳴。
【6】突然の昏倒
❶高濃度曝露では短時間で呼吸停止から心停止に陥る。
❷突然の転倒・転落による外傷を認めることがある。
検査所見とその読みかた
【1】血液ガス:代謝性アシドーシス,低酸素血症,高乳酸血症。
【2】末梢血,血液生化学:血液濃縮,高カリウム血症,肝機能異常,CPKの高値。
確定診断の決め手
【1】中毒発生場所で,硫化水素ガスがガス検知器により
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