自然毒中毒はほとんどの例で食中毒として発生しており,疑いの段階ですみやかに保健所に届け出る。原因物質の確保,患者の血液,尿を保存することは確定診断のために重要である。ここでは重症化しやすく臨床的に重要なフグ,トリカブト,毒キノコによる中毒について述べる。
[Ⅰ]フグ中毒
診断のポイント
【1】フグの摂取歴を確認する。釣ったフグを素人調理で食べている例が多いが,飲食店で提供されたフグによる中毒も発生している。
【2】フグの可能性がある魚を摂取後,口唇や手足のしびれ感や麻痺症状が現れた場合は,本中毒を疑う。
症候の診かた
フグ中毒の重症度分類を表1図に示す。テトロドトキシンの摂取量が多ければ症状は急速に進展し,かつ重症化する。
検査所見とその読みかた
特異的な検査値異常はない。
確定診断の決め手
【1】患者の血液,尿,あるいは摂取した魚からテトロドトキシンを検出すれば確定診断となる。
【2】診療現場では,摂取歴,臨床症状から診断する。
誤診しやすい疾患との鑑別ポイント
フグの摂取歴が明らかでない場合は,診断が難しい場合がある。
[Ⅱ]トリカブト中毒
診断のポイント
【1】トリカブトの摂取歴の確認が重要である。自殺目的の服毒のほか,山菜や薬草などと誤認して摂取する例も多い。
【2】山菜,野草,素人調合の漢方などを摂取したのちに,口唇のしびれ感,脱力,不整脈などを認める場合は本中毒を疑う。
緊急対応の判断基準
【1】トリカブト中毒の死因の多くは致死的不整脈による。薬物治療は無効なことも多く,循環が維持できない場合は,経皮的心肺補助(PCPS,VA-ECMO)を実施することも考慮する。
【2】呼吸筋麻痺による呼吸不全に対しては,すみやかに気管挿管,人工呼吸管理を行う。
症候の診かた
【1】トリカブトを経口摂取した場合,直後から2時間以内に中毒症状が出現する。
【2】摂取後早期の症状は,口唇周囲や指先のしびれ,灼熱感,脱力