診療支援
診断

アルコール依存症候群
††
Alcohol Dependence Syndrome
樋口 進
(国立病院機構久里浜医療センター・院長)

診断のポイント

【1】慢性的な大量飲酒の証拠。

【2】飲酒のコントロール障害。

【3】飲酒中心の生活。

【4】離脱症状。

【5】飲酒に起因する健康障害や社会・家族問題。

救急対応の判断基準

【1】重篤な振戦せん妄やアルコール誘発性精神病が存在する場合には,精神科への入院治療が必要である。

【2】黄疸や吐血などの身体疾患が重篤な場合には,まず,この治療を優先させる。

【3】酩酊状態で,暴言・暴力のひどい場合には,警察に保護要請する。

症候の診かた

【1】大量飲酒

❶大量飲酒に基準はないが,男性では1日60g以上,女性では40g以上が目安となる。日本酒1合またはビール500mLがおよそ20gである。

❷多くの場合,酔うためには以前に比べてより大量の飲酒を必要とする(耐性とよばれる)。

【2】飲酒渇望:飲酒したいという強い欲求。通常は,何をしていても飲酒が頭にあるような状態と理解されている。

【3】コントロール障害

❶飲酒する前に意図したより大量に飲酒する,または飲酒量を減らそうと思っても減らせない。

❷重症になると連続飲酒を繰り返す。連続飲酒とは,一定量の飲酒を一定間隔で繰り返し,そのために終日酩酊した状態を続ける飲酒形態である。

【4】飲酒が生活の中心:家族,仕事,自分の健康などより飲酒を優先させる状況。

【5】離脱症状

❶アルコールが切れかかったとき,または切れたときに出る症状。

❷手の震え,発汗,嘔気・嘔吐,頻脈,重症になると,幻覚,意識障害,けいれん発作などを示す。

【6】合併症:[合併症・続発性の診断]を参照。

検査所見とその読みかた

【1】アルコール依存症候群に特異的な検査は存在しない。

【2】スクリーニングテストとして,Alcohol Use Disorders Identification Test(AUDIT)が汎用されている。カットオフポイントは明確に定義されていないが,臨床では20点以上が妥当と考えられる

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