診断のポイント
バイオマーカーは未確立なため,行動的特徴から判断する。発達歴,知能・発達検査,自閉スペクトラム症(ASD)に関連した検査や,本人や養育者との面接(年少の場合は遊びなどの観察)などから情報を集め,DSM-5あるいはICD-11を参照して診断を行う。
【1】広範で持続的な社会的コミュニケーションおよび対人的相互作用の障害。
【2】限定された反復的な行動,興味,または活動の様式,および感覚過敏/鈍麻。
【3】上記2領域の特徴は,幼児期に顕著(平均知能の成人は,意識的,代償的に獲得した対人的ふるまいをしたり人前で反復・儀式的行動を自制したりすることから,一見したところわかりにくい)。
【4】2領域の障害のために社会生活上の機能が損なわれている。
【5】知的能力障害がある場合には,知的能力障害だけでは障害程度を説明できない。
症候の診かた
診断的特徴は,年齢や生活環境の変化に伴い現れ方が変わる。
【1】1~2歳:社会的発達の著しいこの時期は,“ある”はずの行動が“ない/乏しい”ことを問題とする。
❶例えば,指さしを用いた他者との共同注意,他児への関心,呼名反応,非言語的なコミュニケーション(アイコンタクト,身振り,表情など)が日常的にあるかどうか。
❷感覚過敏が睡眠,食事の問題の背景に隠れていることもあるので,育児全般に困難がないかも尋ねる。
【2】就学前の幼児:3歳以降では言語発達(表出の遅れや理解の障害,反響言語など)に注目する。
❶言葉を話す場合はやりとりになっているか,習慣へのこだわりから思いどおりにならないときに大騒ぎするか(かんしゃく,固まる,自傷,攻撃など)も確認する。
❷集団場面では,自分のルールにこだわり仲間とごっこ遊びができない,他者の動作模倣ができないなど。
【3】学童:学校生活から次のことを確認する。
❶親しい友人がいるか,逸脱的なふるまいがないか(他児には自明の集団ルー