診療支援
診断

注意欠如・多動症(ADHD)
Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder
松本 英夫
(東海大学教授・専門診療学系精神科学)

診断のポイント

【1】不注意の症状が認められる。

【2】多動・衝動性の症状が認められる。

【3】不注意または多動・衝動性のうち,いくつかが12歳以前に存在する。

【4】不注意または多動・衝動性のうち,いくつかが2つ以上の状況(家庭と学校,家庭と職場など)で認められる。

症候の診かた

【1】多動・衝動性は乳児期(手足の動きが多いなど)から認められ,10~12歳頃には軽快することが多い。多動は新規場面で増強されやすい。

【2】不注意は多動・衝動性がおさまった頃から目立ち始める。

【3】成人の注意欠如・多動症(ADHD)は不注意が中心である。忘れ物が多い,掃除や片付けが苦手,ささいな刺激で注意がそれやすいなどに注目する。

検査所見とその読みかた

【1】ADHD-RS-Ⅳなどの簡便な評価尺度を診断の補助として使用する。

【2】成人では小学校の通知表に記載されている所見も診断の参考になる。

【3】WAIS-ⅢやWISC-Ⅳなどの知能検査は診断の根拠ではなく,患者理解の補助として使用する。

【4】必要に応じて脳波や頭部MRIなどを施行する。

確定診断の決め手

【1】不注意,多動・衝動性の症状。

【2】症状のいくつかが12歳以前に存在。

【3】症状のいくつかが2つ以上の状況で存在。

誤診しやすい疾患との鑑別ポイント

【1】身体疾患:てんかん(),進行が緩徐な脳腫瘍(),副腎白質変性症甲状腺機能亢進症()など。

❶詳細な問診。

❷脳波,頭部MRI,血液検査など。

【2】被虐待児

❶乳幼児期での虐待の既往。

❷愛着の問題の存在。

【3】自閉スペクトラム症()

❶ADHDと自閉スペクトラム症は併存することが多い。

❷社会性・コミュニケーションの障害やこだわりの強さが,不注意や衝動性として誤診されることがある。

確定診断がつかないとき試みること

【1】横断的な症状だけでなく,乳幼児期からの詳細な生育歴を聴取する。

【2】成人では両親や親族から幼

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