診療支援
診断

変換症・解離症群
Conversion and Dissociative Disorder
宮地 英雄
(北里大学健康管理センター・准教授)

 「変換症」「解離症群」はそれぞれ,米国精神医学会(APA)が編纂したDSM(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)の第5版の翻訳版から登場した用語である。「変換症」は,「身体症状関連症群」というカテゴリーに含まれる診断名であり,「解離症群」は「解離性健忘」や「解離性同一症」などの疾患を含むカテゴリー名となる。ICD-10では,「解離性[転換性]障害」とまとめられているが,DSMでは,前版から引き続いて別群として扱われている。これらは以降にまとめるように,共通して考えてよい点が多々あるため,本項ではまとめて示す。

診断のポイント

【1】神経疾患を疑う症状:運動障害や感覚障害,けいれん,意識障害の存在。

【2】医学的な身体的検査では上記【1】の症状を説明できない。

【3】症状により,社会的あるいは生活上に苦痛,障害がある。

【4】運動障害,感覚障害,けいれんなどでは「変換症」を,意識障害では「解離症群」を疾患(群)として考える。

緊急対応の判断基準

 呈している症状が重篤で進行性の身体疾患でないことを鑑別する。特に脳疾患,神経疾患の検索が重要となるが,神経機能に影響する他の身体疾患の鑑別も,当然念頭におかなければならない。

症候の診かた

 検査所見に一致しないあるいは十分に説明しえない以下の症候に留意する。特に変換症では,身体疾患が併存しても診断しうることになっているので,「所見が一致しない」のは「部分的」となることもありうる。

【1】運動障害

❶脱力,麻痺,異常運動(振戦など),不随意運動。

❷ ❶に伴う失立,失歩。

❸頭頸部に生じた運動障害では,嚥下障害や発語障害(失声や呂律が回らないなど)。

【2】感覚障害

❶知覚鈍麻,感覚脱失,特殊感覚の障害:視覚,聴覚,味覚,嗅覚など。

❷異常感覚:喉のつまり感(ヒステリー球)など。

【3】けいれ

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?