診療支援
診断

チック症・Tourette症
Tic Disorder and Tourette Disorder
金生 由紀子
(東京大学准教授・こころの発達医学)

診断のポイント

【1】幼児期後期~学童期の発症が多い。

【2】動き(運動チック)は,素早く急に起こり,しばしば繰り返す。

【3】動きとしては,瞬きが典型的であり,顔面から始まることが多い。

【4】音声(音声チック)は,咳払い,鼻鳴らしなどが一般的である。

【5】動きおよび音声は,種類や頻度や強さがしばしば変動する。

症候の診かた

【1】複雑運動チック

❶複数の動きが組み合わさったり一連の動きになったりするものをいう。

❷時には,物を叩いたり放り投げたりする,自分を叩いたり物にぶつけたりする行為の形をとり,器物破損や自傷行為となる場合もある。

【2】単純音声チック:咳払いなどだけでなく,甲高い発声や大きな叫び声となる場合もある。

【3】複雑音声チック

❶語や句や文を発するものをいう。

❷相手に向かって言うよりも口をついて出るという現れ方をする。

❸他者の言葉を繰り返す「エコラリア」,社会的に不適切な言葉を発する「コプロラリア」が含まれる。

検査所見とその読みかた

 診断を決定する検査はない。検査は,鑑別や治療・支援の参考になる情報を得るために行う。

【1】脳波検査:てんかんとの鑑別のため,薬物療法の参考のために実施することがある。

【2】心理検査(発達検査を含む):本人や家族にチックとの付き合い方を伝えるなどの参考にするために,本人の認知や情緒の特徴を把握する。

確定診断の決め手

【1】チックで特徴づけられる症候群全体がチック症であり,チックの種類や持続期間は問わない。

【2】多彩な運動チックおよび1つ以上の音声チックを有して,チックの持続期間が1年以上であるチック症が,Tourette症である。

【3】エコラリアやコプロラリアはTourette症に特徴的なチックだが,診断に必須ではない。

誤診しやすい疾患との鑑別ポイント

【1】不随意運動(舞踏運動,ジストニアなど)

❶チックは顔面に多いが,不随意運動は必ずしも顔面で目立た

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