診断のポイント
【1】悪性腫瘍(癌)の既往。
【2】経時的に悪化する安静時の腰背部痛。
【3】画像検査における骨病変。
緊急対応の判断基準
【1】脊椎転移による脊髄麻痺が重度の場合は24時間以内の緊急除圧術を考慮し,高次医療機関に搬送する。
【2】重度の高カルシウム血症は緊急で補正が必要。
【3】荷重骨の病的骨折は整形外科による手術の検討が必要。
症候の診かた
【1】疼痛:転移巣が増大し骨を破壊することや内圧が高まることによって疼痛が生じる。経時的な悪化と安静時痛が特徴である。一方で,骨の強度が保たれていれば無症状のこともある。
❶病的骨折が生じた場合:急激な疼痛と不安定性が生じる。
❷下肢骨で荷重時痛がある場合:切迫骨折の状態であることが多く,病的骨折を避けるためには厳密な免荷が必要となる。
【2】脊髄麻痺:脊椎転移では不安定性により疼痛が生じるほか,転移巣の増大と脊椎の病的骨折によって脊髄麻痺が生じる。
【3】意識障害:腫瘍の骨破壊あるいは腫瘍からのホルモン産生によって高カルシウム血症となり,さまざまな症状が生じる。重度の場合は昏睡に至る。
検査所見とその読みかた
骨転移は多くの場合,癌の診断時,治療中あるいは治療後の経過観察中に病期評価,スクリーニング目的のCT,PET-CT,骨シンチグラフィによって発見される。しかし原発が不明で,骨転移による症状を契機に発見されるものが10%を占める。
【1】単純X線写真:多くの癌種では,骨転移は単純X線骨写真で境界不明瞭な溶骨像として描出される。骨転移の頻度の高い前立腺癌では造骨性変化,乳癌では溶骨性と造骨性の混在する混合性変化を示す。
【2】CT:骨破壊の領域と程度をより詳細に把握することができ,皮質骨の破壊程度などから強度の類推ができる。
【3】MRI:周囲の軟部組織への進展が詳細に把握できる。血液腫瘍や肺小細胞癌など,骨転移が浸潤性に増大し骨破壊を示さない病