[Ⅰ]腱板断裂
診断のポイント
【1】好発年齢は50~70歳,特に60歳以上に好発する。
【2】外傷性断裂は少なく,変性断裂がほとんどで,挙上動作の多い職業(大工,理髪業,電気工など)に起こりやすい。
【3】MRI・超音波検査で腱板の断裂自体は診断できるが,断裂していても痛くない無症候性断裂も多く,身体所見が重要である。
【4】腱板を構成する4つの筋腱(棘上筋,棘下筋,肩甲下筋,小円筋)のなかでは棘上筋断裂が最も多く,2番目に棘下筋断裂が多い。ともに疼痛と挙上困難を主訴とする。3番目に多い肩甲下筋断裂では内旋筋力低下と上腕二頭筋長頭腱の痛みを続発する。
症候の診かた
【1】Painful arm sign:特徴的に挙上60~120度にかけて痛む。
【2】Drop arm sign:他動的に90度外転位とし,その位置で上肢保持できない。または,他動的に最大挙上し,ゆっくり下ろすように指示すると挙上90度で上肢保持できない。
【3】夜間痛:夜間,特に臥床位で疼痛が増悪し,多くの場合睡眠が障害される。
【4】肩甲下筋断裂の症候
❶Belly press test:上腕下垂位で肘関節を90度屈曲し,手掌で腹部をおさえるように指示する。このとき,正常では手関節中間位で腹部をおさえることができるが,肩甲下筋断裂では内旋筋力低下のため手関節屈曲位となる。
❷Lift-off test:手背を背部に回し肘を90度屈曲し,手を背部から離すように指示する。このとき,肩甲下筋断裂では内旋筋力低下のため背中から離すことができない。
検査所見とその読みかた
【1】MRI:T2強調画像もしくは脂肪抑制T2強調画像が有用で,筋腱実質は低輝度領域,関節水腫は高輝度として描出される。
❶棘上筋断裂:Oblique coronal sliceにて断裂部に貯留した関節水腫が高輝度領域として,また腱板断端は低輝度領域との境界線として描出される