上肢の絞扼神経障害の代表的疾患として手根管症候群と肘部管症候群がある。
[Ⅰ]手根管症候群
診断のポイント
【1】中高年の女性。
【2】手根管部でのTinel徴候。
【3】母指から環指橈側のしびれ。
【4】母指球筋の萎縮。
【5】神経伝導速度検査における短母指外転筋遠位潜時および感覚神経伝導速度の遅延。
症候の診かた
【1】しびれの局在は正中神経支配領域を基本とする。環指の橈側と尺側の違いは有力な所見となる(ring finger splitting)。
【2】症状の強い時期には夜間早朝の痛みを訴える。
【3】手関節屈曲位を1分間維持することによりしびれが増悪する(Phalen徴候)。
【4】母指球筋の萎縮により母指と示指で丸を作る動作(perfect O)が困難となる。
検査所見とその読みかた
【1】単純X線写真:正面像と側面像で手関節の変形の有無を評価する。手根管撮影も行い,占拠性病変の陰影がないか確認する。
【2】超音波検査:手根管入口部(近位部)における正中神経の腫大(偽神経腫)が評価できる。
【3】MRI:正中神経を手根管全域で評価が可能である。屈筋支帯の掌側凸の張り出しは手根管症候群の所見である。偽神経腫,占拠性病変,腱滑膜炎さらに関節炎の有無などを含めた評価も可能である。
【4】神経伝導速度検査:偽陽性の存在に注意し,健側や尺骨神経の値と比較して運動神経では遠位潜時そして感覚神経の伝導速度の遅延を評価する。
確定診断の決め手
【1】夜間痛,手根管部でのTinel徴候やPhalen徴候などの症状および所見がそろっていることが診断するうえで最も重要である。
【2】補助診断として神経伝導速度検査や超音波検査,MRIなども診断的価値が高い。
誤診しやすい疾患との鑑別ポイント
頸椎症性神経根症,胸郭出口症候群:これらとの鑑別を要すことがある。手根管部でのTinel徴候やPhalen徴候など局所の所見を認めれ
関連リンク
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