診断のポイント
【1】発熱,股関節痛,鼠径部の腫脹,股関節の運動減少。
【2】白血球数増加,CRP陽性,血沈の亢進。
【3】造影MRI所見。
症候の診かた
【1】発熱:ほとんどの症例で認められ,乳児では発熱がないと診断が遅れる可能性がある。新生児では特に敗血症症状を呈した場合,四肢の関節に注意が向かなくなることがあり注意を要する。
【2】歩行困難:歩行開始後の幼児で歩行困難が認められ,股関節の疼痛によるものと考えられる。
【3】鼠径部の腫脹:乳児でおむつを替えるときなどに気づかれる場合があるが,視診で腫脹が確認できる場合は,かなり病状が進行していると考えられる。
【4】股関節の運動減少:罹患関節の関節液貯留による疼痛が主な原因と考えられ,進行すれば仮性麻痺を呈する。
検査所見とその読みかた
【1】白血球,CRP,血沈:細菌による炎症反応のため,白血球は増加と核の左方移動が認められ,CRPの陽性化,血沈の亢進が出現する。
【2】単純X線写真:早期には股関節腔の拡大による大腿骨の側方変位と軟部組織の腫脹のみしかわからない(図1図)。病状が進めば,病的脱臼や骨融解が出現する。
【3】超音波:股関節内の液体貯留による股関節腔の拡大が認められる(図2図)。股関節腔の拡大がない場合はその他の部位の炎症を考える必要がある。
【4】MRI:造影MRIは最も的確な診断手技である。股関節の液体貯留,股関節周囲軟部組織や骨の炎症の有無などの確認が可能であり(図3図,4図),股関節炎を伴わない大腿骨骨髄炎や周囲の筋炎を診断できるため,治療方針の決定に最も有用である。
【5】関節穿刺:股関節の穿刺を行い関節内の液体の性状を確認する。細菌の塗抹,培養や細胞数,糖値を検査し感染徴候を確認する。
確定診断の決め手
【1】強い血液学的炎症所見:白血球数の増加,CRPの強陽性,血沈の亢進,発熱。
【2】単純X線による大腿骨側方変位。
【3】造影