診療支援
診断

発育性股関節形成不全(先天性股関節脱臼)
Developmental Dysplasia of the Hip (DDH; Congenital Dislocation of the Hip)
帖佐 悦男
(宮崎大学教授・整形外科学)

 最近は発症機序が,先天性よりむしろ発育に伴い脱臼することからDDHを用いる。

診断のポイント

 2次検診への紹介基準として以下のポイントを記す。

【1】大腿皮膚溝または鼠径皮膚溝の非対称

【2】股関節開排制限(開排角度70度以下)。

【3】家族歴:血縁者の股関節疾患。

【4】女児。

【5】骨盤位分娩(帝王切開時の肢位を含む)。

症候の診かた

【1】大腿皮膚溝または鼠径皮膚溝の非対称(図1a)。

【2】脚長差(Allisサイン):仰臥位で股関節90度屈曲,膝関節最大屈曲位で大腿部を合わせ,膝の高さをチェックする。脱臼側の脚短縮を認める(図1b)。

【3】伸縮テスト(telescopingテスト):Allisサインの肢位で,大腿部を押したり引いたりすると脱臼側は異常な動きを感じる。

【4】股関節開排制限:股関節と膝関節を90度屈曲し無理なく開く。多くは向き癖と反対側の股関節にみられる。男児では,正常でも開排制限(対称性)を認めることがある(図1c)。

【5】大腿骨頭の触診:Scarpa三角(鼠径靱帯,縫工筋,内転筋群で構成)で大腿骨頭を触知する。触知できない(空虚)場合,脱臼を疑う。

【6】大転子高位:正常股関節は開排位で大転子と坐骨結節が同一平面上に触知するが,脱臼側は段差を認める。

【7】クリック徴候(Ortolaniテスト,Barlowテスト):股関節をゆっくり開排すると脱臼側では整復されたクリックを感じる。無理に行うと骨頭の成長障害をきたす。

検査所見とその読みかた

【1】両股関節単純正面X線写真(図2):乳幼児の場合,骨端核が描出されず診断に苦慮することがあるので基本線を診断に用いる

❶Hilgenreiner線(Y線):Y軟骨の腸骨下端を結んだ線で,脱臼側の大腿骨頭はこの線より上に位置する。

❷Ombrédanne線(Perkins線):臼蓋嘴からHilgenreiner線への垂線で,脱臼

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?