診断のポイント
【1】大腿骨頭を形成する近位骨端の壊死性病変。
【2】6~8歳が好発年齢,男児に多い。
【3】股関節痛に加えて,大腿前面~膝にかけての痛み(関連痛)。
【4】跛行。
【5】単純X線における骨端の圧潰。
症候の診かた
【1】年齢・性
❶4~13歳頃までみられるが,6~8歳にピークがある。
❷4~6:1で男児に多い。
❸10%程度で両側性が存在する。
【2】股関節痛
❶自発的な股関節痛は軽いことが多い。
❷Scarpa三角部に圧痛を認める。
【3】関連痛:股関節由来の大腿~膝近傍の疼痛(関連痛)を示すことが少なくなく,要注意である。
【4】跛行:家人が跛行に気づいて受診する場合もある。
【5】可動域:内旋制限は必発であり,疼痛も誘発される。
検査所見とその読みかた
【1】単純X線(図1図,表1図):圧潰のため骨端の高さが減じており,軟骨下骨にcrescent signを認める。特に骨頭の側面像で明らかとなりやすい。
【2】MRI:T1強調画像で低信号域が骨端に存在し,関節液の貯留が認められる。
【3】血液検査:異常を示さないことが多い。
確定診断の決め手
【1】単純X線における骨端の圧潰の存在。
【2】MRIにおいて骨頭(骨端)内の低信号領域の存在。
誤診しやすい疾患との鑑別ポイント
【1】単純性股関節炎
❶小児期の股関節痛の原因のなかで最も多い。
❷急激な発症で歩行不能となるが,1週間以内に軽快する。
❸MRIでは関節水腫を認めるものの,骨端に信号変化を生じない。
【2】化膿性股関節炎(→)
❶強い股関節痛に加えて,感染による高熱を伴う。
❷血液検査では白血球増多やCRO高値を認め,MRIでは関節水腫を認めるものの,骨端に信号変化を生じない。
【3】大腿骨頭すべり症(→)
❶骨端線離開により骨端は骨幹端に対して後方にすべる成長期特有の疾患である。
❷12歳前後が好発年齢であり,単純X線側面像で骨端のすべりを確認することで鑑別す
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