診断のポイント
【1】思春期前が好発年齢(男児10~15歳,女児9~13歳)。
【2】性別では男児,体型では肥満児に多い。
【3】症状発現は股関節とは限らない。
【4】股関節単純X線撮影の左右比較が大切である。
症候の診かた
病型と発症時期で3つに大別される。
【1】安定型(stable type)/発症早期
❶荷重時,股関節から大腿,膝にかけての疼痛や違和感。
❷跛行
■立脚期の短い疼痛回避性歩行となる。
■痛みを訴えない場合もある。
❸すべりの程度に応じた股関節内旋・屈曲制限の出現。
❹股関節伸展は制限されない。
❺約半数は股関節痛を訴えないことに注意する。
❻外傷の既往がないことを確認する。
【2】安定型(stable type)/亜急性期から慢性期
❶すべりの程度と関節適合不全による多彩な症状が特徴。
❷関節不適合による股関節屈曲時の疼痛。
❸大腿骨寛骨臼衝突(femoro-acetabular impingement:FAI)を生じ,股関節屈曲や内旋時の疼痛が出現する。患肢は外旋する。股関節屈曲,外転,内旋の制限が顕在化する。
❹股関節屈曲で患肢が外旋,外転する(Drehmann徴候)。FAIによる疼痛を回避しようとする肢位が出現する。
❺骨端転位が進むと下肢短縮,中殿筋不全が出現する。Trendelenburg徴候陽性となる。
【3】不安定型(unstable type)
❶軽微な外傷を契機に激烈な痛みを生じ,歩行困難となる。
❷可動域制限はすべての方向に及ぶ。伸展不能が安定型との鑑別点である。
❸病歴聴取で発症初期の症状があれば,acute on chronic型とよぶ。
検査所見とその読みかた
【1】単純X線
❶読影のポイント
■正確な股関節正面・側面像の左右比較が大切である。大腿骨頭の骨端部が骨幹端に対し後内側に転位する病態を読影する。
■患側は正面像で外旋位をとることが多い。側面像では屈曲,外転が困難な場合があ