診断のポイント
【1】緩徐に進行する股関節痛,場合により大腿部痛や殿部痛。
【2】中高年以降の女性に多い。
【3】単純X線写真で関節裂隙の狭小化,骨硬化像,骨棘形成,骨囊胞の形成などの関節症性変化を認める。
【4】明らかな原因がない一次性股関節症と,発育期や成人後の股関節疾患や外傷に起因する二次性股関節症に分類される。わが国では寛骨臼形成不全に起因する二次性の変形性股関節症が多い。
【5】「変形性股関節症診療ガイドライン2016 改訂第2版」が発行されている。
症候の診かた
【1】股関節痛:歩行開始時や運動時の鼠径部痛が初発症状となることが多い。進行すると安静時痛や夜間痛を呈するようになる。初発症状が大腿部痛や殿部痛のこともあるため,注意を要する。
【2】可動域制限:痛みや関節周囲の軟部組織の拘縮により,股関節の可動域制限を生じる。初期のうちは軽度であるが,進行すると屈曲・内転・外旋拘縮をきたすことが多い。
【3】跛行:中殿筋の筋力低下を生じると,患側荷重時に健側の骨盤が下がるTrendelenburg跛行を生じる。また,疼痛や可動域制限,脚長差も跛行の原因となる。
検査所見とその読みかた
【1】単純X線写真
❶わが国では寛骨臼形成不全に由来する変形性股関節症が多いため,単純X線写真股関節正面像で寛骨臼形成不全の有無を判断する。
❷Sharp角45度以上またはCE角20度未満を寛骨臼形成不全と診断することが多い(図1図)。
❸進行すると関節裂隙の狭小化,骨硬化像,骨棘形成,骨囊胞がみられる。
❹股関節単純X線写真の所見により,わが国では以下のような病期分類が一般的である。
■前股関節症:寛骨臼形成不全や大腿骨頭の変形がみられるが,関節裂隙は保たれている。
■初期股関節症:関節裂隙は部分的に狭小化し,寛骨臼や大腿骨頭に骨硬化像を認める。
■進行期股関節症:関節裂隙は狭小化し,一部消失する。寛骨臼や大腿骨頭に骨棘