診療支援
診断

大腿骨近位部骨折
Hip Fracture
今井 教雄
(新潟大学大学院医歯学総合研究科特任教授・健康寿命・運動器疾患医学講座)

診断のポイント

【1】高齢者(特に80歳以上)。

【2】女性。

【3】転倒(しりもち)。

【4】股関節痛。

【5】歩行困難。

症候の診かた

【1】股関節痛

❶多くのケースで股関節痛または殿部痛を訴える。高齢者が転倒を機に受傷し,股関節痛を訴えている場合,まず本骨折を念頭におく必要がある。

❷このような症例に遭遇した場合,可動域などを詳細に確認しようとすると骨折部からの出血を増加させるばかりか,骨折部の転位を増悪させる危険があるため,まず股関節単純X線写真(正面,軸写)を施行するのが望ましい

❸骨折を生じても自動運動や歩行が可能なこともあり,「骨折なし」と決めつけるべきではない。

【2】歩行困難

❶多くが歩行困難となり,救急搬送されてくることと思われる。

❷多くは股関節屈曲・外旋位をとる。しかしながら,骨折があってもまれに歩行可能な例があるので,まず股関節単純X線写真にて,骨折の有無の確認を優先させるべきである。

検査所見とその読みかた

 股関節単純X線写真(正面,軸写)を施行し,骨折の有無を確認する。大腿骨近位部骨折は骨折部位により頸部骨折と転子部骨折に大別される(図1)。

【1】大腿骨頸部骨折

❶骨折部の転位の程度により分類されたGarden分類が最も広く用いられている(図2)。

StageⅠ:不完全骨折。大腿骨頭は外反位をとり,骨折線の上部では陥入し,内側頸部皮質に骨折線はみられない。

StageⅡ:転位のない完全骨折。遠位骨片と近位骨片の主圧迫骨梁の走行に乱れがない。

StageⅢ:転位のある完全骨折。近位骨片は内反,後方回転する。

StageⅣ:転位が高度な完全骨折。

❷一般的にはStageⅠ,Ⅱを非転位型,StageⅢ,Ⅳを転位型の2つに分類し,治療法を選択している。

❸Garden分類のほかにPauwels分類(図3)があり,骨折線と水平線のなす角度が70度以上(Ⅲ度)であると剪断力が強く,

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