診断のポイント
【1】男性は20~50歳台の性活動性の高い年齢。
【2】女性は20~30歳台に多い。
【3】感染成立部位の局所症状(1期疹)。
【4】手掌足底の皮疹(2期疹)。
【5】口腔粘膜症状(2期疹)。
症候の診かた
【1】梅毒1期疹
❶原因菌であるTreponema pallidum(TP)の侵入部位に無痛性の硬い丘疹(初期硬結)(図1図)を生ずる。その後,自壊し潰瘍(硬性下疳)(図2図)となる。少し遅れて無痛性の所属リンパ節の腫脹を呈する。
❷潰瘍にほかの細菌感染を伴えば,潰瘍部も腫脹したリンパ節も有痛性となることもあり注意を要する。
【2】梅毒2期疹
❶皮膚症状:手掌足底の丘疹性梅毒(図3図)は特徴的な所見である。そのほかにも梅毒性乾癬,梅毒性バラ疹,膿疱性梅毒,梅毒性脱毛など多彩な皮膚症状を呈する。
❷粘膜症状:口腔粘膜の梅毒性アンギーナがある。
【3】梅毒3~4期疹:TP感染後3年以上経過し,結節性梅毒疹やゴム腫を呈する時期を指すが,抗菌薬が汎用される近年の日常診療で遭遇することはほとんどない。
検査所見とその読みかた
通常,感染症の診断は原因微生物の同定が必須である。しかしTPは試験管内や人工培地での培養は困難なため,主に血清学的判断により診断される。
【1】血清学的診断
❶自己抗体をみる脂質抗原法(RPR法)と,TPを抗原とするTP抗体法がある。
❷これらの検査はそれぞれ短所をもつため,基本的に両者を同時に測定し,短所を補って感染の有無や病勢を判断する。
■従来,梅毒感染初期では,まず脂質抗原法が陽性を示すようになり,ついでTP抗原法も陽性を示すとされてきた。
■しかし,検査法,検査試薬の技術向上によって陽性を示すまでの空白期間(window period)は短縮されており,使用する検査試薬によってはTP抗原法のほうが先に陽性を示すこともあり,注意を要する。
確定診断の決め手
【1】感染リスクの