診断のポイント
【1】紅色~紫色~青色の斑・局面・腫瘤。
【2】血管腫:増殖性変化を有する腫瘍で,増大や退縮がみられる。
【3】血管奇形:局所的な脈管の異常拡張・形態異常で,生涯存続し,成長とともに増大する傾向にある。
症候の診かた
問診のポイントは発症時期(出生時からあるか)と経過(色調や性状が変化するか)である。
【1】乳児血管腫
❶多くは出生時にはなく,生後1週間までに発症し次第に赤色調が増して紅色斑となるが,出生時から毛細血管拡張がみられる例も約30%ある。
❷生後1か月頃より隆起し始め,鮮紅色の局面(図1図)や腫瘤になる。
❸数年かけて退縮し,腫瘤は瘢痕を残す。
【2】毛細血管奇形
❶出生時よりみられ,成長と同じ比率で増大する。
❷平坦な紅色斑(図2図)で,自然消退しない。
❸加齢とともに色調が暗赤色に変化し,顔面では肥厚し結節を伴うことがある。
検査所見とその読みかた
【1】乳児血管腫
❶皮下成分や内臓病変を把握する必要がある場合はエコーやMRIが有用である。
❷通常病理検査は施行しないが,GLUT-1染色陽性は乳児血管腫に特異的である。
【2】毛細血管奇形:部位と分布によっては他臓器の合併症を伴う症候群のことがある。
❶Sturge-Weber症候群
■顔面の毛細血管奇形と,頭蓋内軟膜や眼の脈絡膜の血管奇形を合併する。
■眼圧検査で緑内障の有無を確認する。けいれん発作の多くは乳児期に発症するので注意を要し,脳血管病変の検出には造影MRIが有用である。
❷Klippel-Trenaunay症候群
■片側肢の毛細血管奇形と異常静脈・静脈瘤,骨・軟部組織の肥大を3徴とする。
■脚長差は単純X線で,静脈奇形はドプラ超音波やMRI静脈撮影で診断できる。
確定診断の決め手
乳児血管腫と毛細血管奇形は,通常視診で診断できる。
誤診しやすい疾患との鑑別ポイント
【1】サーモンパッチ(図3図)
❶顔面正中部(前額正中,眉間,上眼瞼
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