診療支援
診断

母斑症
Phacomatosis (Neurocutaneous Syndrome)
金田 眞理
(大阪大学大学院准教授・情報統合医学皮膚科学教室)

 母斑症〔Phacomatosis(neurocutaneous syndrome)〕とは,皮膚の母斑と同時に他の器官の病変を有する疾患群で,代表的な疾患として,結節性硬化症(tuberous sclerosis complex:TSC),神経線維腫症Ⅰ型(neurofibromatosis type1:NF1)(Recklinghausen病)や伊藤白斑などがある。頻度はすべての母斑症を合わせたもの。

診断のポイント

【1】TSC:さまざまな時期に,全身にさまざまな症状が出現する。

❶胎生期の多発性心横紋筋腫,生下時からの3個以上の葉状白斑,乳児期の点頭てんかん,乳幼児期からの発達障害,自閉症スペクトラム障害,顔面の血管線維腫の多発,小児期以降の腎の血管線維腫,シャグリンパッチ,爪の多発性線維腫など(図1)。

❷女性の場合は成人期からのリンパ脈管筋腫症(lymphangioleiomyomatosis:LAM)などが診断に重要。

❸各症状の程度はさまざまで最近は神経症状を呈さない症例が増加。

【2】NF1

❶生下時の6個以上のカフェオレ斑,大Recklinghausen斑,有毛性褐青色斑。乳幼児期からの神経の神経線維腫,若年性黄色肉芽腫,貧血母斑。幼小児期以降の虹彩結節,小Recklinghausen斑,皮膚の神経線維腫(図2)。

❷生下時に四肢骨の変形や頭蓋骨の欠損を,思春期以降では,脊椎の変形を認めやすい。血管奇形も多い。

❸学習障害や注意欠如・多動症が30%ほどに認められる。

【3】伊藤白斑

❶先天性または出生早期に生じる2領域以上のBlaschko線に沿って生じる不完全脱色素斑が特徴(図3)。

❷種々の神経症状や筋骨格系疾患を併発する。

緊急対応の判断基準

【1】TSC:てんかんの重積発作時。突然の意識消失や腰部の激痛では,腎の血管筋脂肪腫からの出血や破裂を考える必要がある。

【2】NF

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