診療支援
診断

側頭骨骨折
††
Temporal Bone Fracture
村上 信五
(名古屋市立東部医療センター・病院長)

診断のポイント

【1】問診で頭部外傷の既往。

【2】頭部の単純X線(Schüller法,Stenvers法),CTで骨折線。

緊急対応の判断基準

 側頭骨骨折は交通事故や転倒・転落などの頭部外傷で生じるため,頭蓋内出血や脳挫傷による意識障害を伴うことも少なくない。したがって,緊急時にはまず生命の救済を優先し,側頭骨骨折に対応する。

症候の診かた

【1】顔面神経麻痺

❶顔面表情筋の動きを観察する。

❷通常は片側麻痺であるため顔面の非対称で麻痺が確認できる。

❸しかし,まれに両側性麻痺のことがあり,この場合は顔面に非対称はみられず無表情な仮面様顔貌で,意識が回復するまで麻痺に気付かないことがある。

【2】難聴:問診にて難聴,耳鳴,耳閉感の有無を聴取。

【3】めまい:問診でめまい,嘔気の有無を聴取するとともに眼振を観察。

検査所見とその読みかた

【1】耳鏡検査:鼓膜を観察し,鼓膜穿孔,鼓室内血腫,外耳道の骨折,耳小骨の変位など(図1)をチェックする。

【2】顔面神経麻痺機能検査

❶麻痺の重症度は40点法(柳原法)で〔「顔面筋の麻痺・けいれん」項()の図1参照〕,神経障害の程度は誘発筋電図検査で評価する。

❷40点法でスコアが8点以下を完全麻痺,誘発筋電図検査で麻痺側と健側の振幅比(ENoG値)が10%以下の場合,高度神経変性とする。

【3】聴力検査:純音聴力検査を行い,伝音難聴(鼓膜,耳小骨の損傷)と感音難聴(内耳損傷)を鑑別する。

【4】めまい検査

❶Frenzelの眼鏡あるいは赤外線カメラで眼振の有無,方向を観察して前庭機能を評価する。

❷眼振の向きが健側方向であれば麻痺性眼振で患側の前庭機能低下,眼振がない場合は前庭機能が残っていると判断できる。

❸眼振は急性期には顕著にみられるが,慢性期になると前庭代償で減弱,消失する。

【5】画像検査

❶骨折が錐体骨の長軸に平行する縦骨折と直交する横骨折,そして両者の混在した

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